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exhibition

多様なゲストキュレーターが選ぶそれぞれの「スペクトラム」

スペクトラムファイル 12 西尾 美也

推薦者 臼井ちか

期間:10.27〜11.13
会場:スパイラルエントランス

2015年、スパイラルの活動は「スペクトラム」をコンセプトに、展覧会、サロン(トーク)など、様々なイベントを展開いたします。「スペクトラム」とは、英語で“連続体” や“領域”、プリズムを介して生じる色彩の配列を意味します。今日の日本では、現代美術、音楽、ダンスなどの既存の表現の垣根を超え、国籍も世代も問わず、領域横断的に創作をする全く新しいクリエーターが多数認められています。こうした各所で発生するいまだ評価の定まらない取り組みを、そのあり様から「スペクトラム」と称して、ひとつのムーブメントとして紹介します。
いつの時代も、異彩を放つ才能の切磋琢磨の中から新たなクリエイティビティは産まれ、連綿と引き継がれていきます。いま、急激に活発化するクリエーターたちもまた、新時代を切り開いていく力になると信じ、彼らとともにスパイラルも新しい価値創造に取り組みます。それが不安な社会情勢に苛まれる私たちの暮らしに豊かさとまだ見ぬ美しさ、そしていつの日か平和をもたらすと信じています。
スパイラルが提唱する「スペクトラム」という考え方に賛同する多様なゲストキュレーターが推薦者となり、彼らが選ぶアーティストをスパイラルエントランスの特設展示スペースで紹介します。

Spiral is celebrating its 30th anniversary in 2015. To mark the milestone, over the year it will be hosting a series of exhibitions, salons and other events inspired by the theme of “spectrum.” The word “spectrum” itself has many contexts. beliefs, social, political, scientific or artistic. In a similar way, today in Japan many creative talents are emerging with vibrant interdisciplinary and crossover work that employ bold new kinds of methodologies. Their innovative work transcends the definitions of nationality or generation, and the pre-existing fields of artistic expression like contemporary visual art, music, and dance. We will showcase these diverse structures still in flux, grouping them together as a movement we call a “spectrum.”

Across history we can see that the next generation of art and design talent is born out of competition between the creators who demonstrate new and unusual flair. We believe that the seriously active artists and designers are the key pioneers who can develop culture and society for the future. Spiral works together with these artistic talents to present new forms of creativity. The values that emerge from these have the potential to deliver fresh expressions of beauty and even peace, enriching our lives in these uncertain times we live in today.

Based on this theme, Spiral is holding a series of small exhibitions called “Spectrum File” in its ground floor entrance area.
Spectrum File ー 12 西尾 美也
西尾美也公式サイト▷▷▷http://yoshinarinishio.net/

【推薦者の言葉】
西尾美也の作品には、大胆な企てがユーモアをまとって埋め込まれています。
作品には人が関わることを含めた設計がなされ、これまでも多くの人が熱心に取り組んできていますが、それは何故でしょうか? 
西尾が自分でやりたいと思うことから発想し、親しみやすい工程を考え、多様な考えがあることを良しとすることから、私たちはのびのびと積極的に、作品に関わることができるのではないでしょうか?
開かれた制作の時間を体験した人たちは、自分の生業に戻っても、他者と境のないフラットな関係を作り、物事を進めていくのかもしれません。西尾の作品は、作品を体験した人のその先も無数の色で構成されている光の帯に載せ、まだ見ぬ先へ、向かっているかのようです。


Nominator Text

In the work of Yoshinari Nishio is a bold undertaking that wears the guise of humor. The artworks are planned in a way that involves others and numerous people have engaged passionately with them. Why is this?

Is it because he conceives ideas based on what he wants to do, considers processes that are accessible, and regards diverse ideas as a good thing? As a result, we are able to become involved more proactively with the work.

The people who have experienced this open creative process, even after returning to their regular occupations, probably go on to build borderless, horizontal relations with others, and still continue to develop things in their lives. Nishio’s artworks place the art ahead of the viewer on a belt of light comprised of infinite colors, as if they are moving toward this as yet unknown future.
■関連イベント①
靴磨きワークショップ
西尾美也による《Nairobi Collection:靴磨き屋》を実際に体験できるワークショップを開催します。靴を磨く人、磨かれる人。どちらの立場からでもご参加いただけます。スパイラルエントランスで、靴磨きをする/されるという行為から、どんな風景が見られるでしょうか。ぜひ体験してみてください。
※本イベントは、アート作品としての靴磨きを体験するワークショップです。プロによる靴磨きのサービスを行うものではありません。

日時:2015年11月3日(火・祝)14:00〜16:00
会場:スパイラルエントランス
参加費:無料


■関連イベント②
臼井ちか×西尾美也トークイベント
推薦者の臼井ちか氏とアーティストの西尾美也氏によるトークイベントを開催します。出品作やこれまでのナイロビでの活動などについて映像を交えてご紹介します。また今回の制作協力者で、限界芸術家として「大地の芸術祭2015」などで作品を発表している西尾氏の父、西尾純一氏もゲストとしてトークに参加します。

日時:2015年11月3日(火・祝)17:00~18:30
会場:スパイラルエントランス
参加費:無料

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【Spectrum File ー 12展示作品解説】

《Nairobi Collection:通勤ラッシュ》 (2015)インクジェットプリント
《Nairobi Collection:靴磨き屋》(2015)木材、革、気泡緩衝材、ニス、ペンキ
《Nairobi Collection:体重計り屋》(2015)体重計

 《Nairobi Collection》は、僕が2011年から2013年までの2年間を暮らしたケニア共和国の首都ナイロビのファッション事情を紹介する体験型のプロジェクトです。ケニアのファッションと聞くと民族衣裳なんかを思い浮かべるでしょうか?実際は、ナイロビは大都会。日本と同じように年齢や性別、所得などの違いで様々な装いが見られます。

 たとえば通勤時間になると、キベラという世界最大級のスラム街からたくさんの人たちが同じ方向を向いて歩いてくる光景が見られます。いわゆる通勤ラッシュです。黒いスーツを身にまとった人々が電車に詰め込まれている、そういう日本の通勤風景とは全然違います。ナイロビに暮らす人の多くは、世界から巡ってきた古着を日常着としています。そこにはトレンドがないからこそコーディネートに固定概念がなく多様性があります。また、便利で快適な生活にかまけて姿勢が悪くなってしまった身として何より痛感するのは、かれらの姿勢や歩き方がそもそもかっこいい、ということです。多種多様な装いの人びとが同じ時間帯に同じ道を颯爽と歩いている。ここでは通勤風景が、まるで路上のファッションショーのようになっているのです。

 服を仕立てたりお直しをするテーラーの姿が街のいたるところで見られるなど、ファッションにまつわる仕事もたくさんあります。とりわけ興味をひかれたのが、路上の靴磨き屋さんと体重計り屋さん。「オシャレは足元から」とはよく言いますが、舗装されていない道が多いというのも理由のひとつだと思います。ナイロビの人たちにとって靴磨きは欠かせない習慣のようです。では、体重計り屋さんはどうでしょう?家庭に一台ずつ体重計を所有するより、必要な時だけ5円とか10円のお金を払って体重を計る。これが健康管理の方法として、またビジネスとして成り立つのも途上国の特徴ですが、僕が面白いと思ったのは、こういった職業があるからこそ生まれるコミュニケーションの部分です。

 今の日本では、靴を履いたまま他人に靴磨きをされる経験をしたことのある人は減ってきていると思いますが、それはまるで新感覚のマッサージ。ナイロビでは、職人の手作りで味わいのある靴磨きチェアが作られているのですが、その特等席に座って靴を磨いてもらう時間は特別なひとときでした*。

 路上で体重を計って、見知らぬ店主に「○○kgだね、もっとしっかり食べて」と言われるなんてことも日本ではなかなか考えられないことだと思います。ここでは個人の体重は隠すものではなく、パブリックなものになっている。そして、また別の日に同じ体重計り屋に行くと、だいたい以前の体重を覚えている。増えると、「いいね」と声をかけられたりするわけです。

 少し高めの椅子に腰掛ける、あるいは靴を脱いで体重計にのる。家では当たり前のようにしている行為ですが、スパイラルエントランスというパブリックな環境に場を移すことで、鑑賞者/参加者の方々には、「座る」、「立つ」という単純な行為に改めて意識を向けてほしいと思っています。言い方を変えれば、このプロジェクトは、座る人、立ち止まる人を作り出すテンポラリーでパブリックな人間彫刻でもあるのです。あるいは参加者は、座ることで、立ち止まることで、日常を別の視点から眺める機会を得るでしょう。スパイラルの外に出たら、今度は路上のファッションショーに参加している気持ちで、ぜひ「歩く」ことにも意識を向けてみてください。


*今回スパイラルにナイロビらしい造形を持ち込むために、ここ最近、限界芸術家として作品が紹介されるようになった僕の父親、西尾純一に靴磨きチェアの制作をお願いしました。何でも自分で作ってしまうところや、自分で解釈しながら新しい体験を楽しむという態度が、ケニア人に似ているなぁと前々から思っており、今回のコラボレーションにいたりました。


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【アーティスト Artist】
西尾美也(にしお・よしなり)

1982年奈良県生まれ、同在住。
2011年東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。文化庁芸術家在外研修員(ケニア共和国ナイロビ)等を経て、現在、奈良県立大学地域創造学部専任講師。装いの行為とコミュニケーションの関係性に着目し、市民や学生との協働によるプロジェクトを国内外で展開。アフリカと日本をつなぐアートプロジェクトの企画・運営の他、ファッションブランドFORM ON WORDSも手がける。主な個展に、京都服飾文化研究財団KCIギャラリー(京都、2006)、Gallery Cesar Harada(フランス、2007)、3331ギャラリー(東京、2011)など。主なグループ展に、「Media City Seoul」ソウル市立美術館(韓国、2006)、「日常の喜び」水戸芸術館(茨城、2008)、「越後妻有アートトリエンナーレ」(新潟、2009)、「Biennale Benin」(ベナン、2012)、「LIFE by MEDIA」YCAM(山口、2013)、「六本木アートナイト」(東京、2014)、「拡張するファッション」水戸芸術館(茨城、2014)、「服の記憶」アーツ前橋(群馬、2014)、「Invisible Energy」ST PAUL St Gallery(ニュージーランド、2015)など。

Yoshinari Nishio

Yoshinari Nishio was born in 1982 in Nara, Japan, where he continues to live and work today. After obtaining a Ph.D. in fine arts from Tokyo University of the Arts in 2011, he stayed in Nairobi, Kenya, for two years as grantee of the Agency for Cultural Affairs. He is currently a junior associate professor at Nara Prefectural University. His work deals with the relationship between fashion and communication, developing art projects with the cooperation of people and students around the world. Nishio set up his own fashion label FORM ON WORDS, based on unique long-term study on clothing through the lens of a contemporary artist. He has also been active in planning and organizing art projects that link Africa and Japan.

His solo exhibitions include 3331 Gallery (Tokyo, 2011), Gallery Cesar Harada (Paris, 2007) and KCI Gallery (Kyoto, 2009). His group exhibitions include “Invisible Energy” (ST PAUL St Gallery, New Zealand, 2015), “Wardrobe Memories” (Arts Maebashi, 2014), “You reach out – right now – for something: Questioning the Concept of Fashion” (Art Tower Mito Contemporary Art Center, 2014), Roppongi Art Night 2014, “LIFE by MEDIA” (YCAM, 2013), Biennale Benin (Cotonou, Benin, 2012), Echigo-Tsumari Art Triennale (Niigata, 2009), “Happiness in Everyday Life” (Art Tower Mito Contemporary Art Center, 2008), and Mediacity Seoul 2006 (Seoul Museum of Art).
【推薦者 Nominator】
臼井ちか
静岡県生まれ。有限会社チカソシキ代表取締役。
日本大学芸術学部演劇学科卒業。株式会社海藤オフィスに入社し、
デザイン、アート性を重視したイベントの企画制作を実践で見につける。
1996年有限会社チカソシキ設立。
主な企画制作は、東京銀座資生堂ビルオープニングレセプション(2001)、
HOTEL HIBINO(2005)、アースキャラバン(2008)、
屋久島ビジョン21(2013)、上賀茂神社の遷宮に関わるイベント(2015)。

アートイベントが良い体験になるよう、アーティストにとってより良いことは何か、
関わる人ひとりひとりにとって何が良いことかを考え続けるアートプランナー。
地域活性化、店舗展開、文化継承などあらゆることをアートととらえ、
持ち前の企画力と体力で、ひとつひとつ組み立てている。
こどもワークショップの手法にも定評がある。
共著として「時間のデザイン」中西紹一・早川克美編 藝術学舎刊(2015)がある。


Chika Usui

Born in Shizuoka Prefecture, Chika Usui is the representative director of Chikasoshiki. She graduated from the theater course at Nihon University College of Art and joined Kaito Office, where she worked in event planning and production, with a focus on design and art. She founded Chikasoshiki in 1996. Major projects include the opening reception for the Tokyo Ginza Shiseido Building in 2001, Hotel Hibino in 2005, Earth Caravan in 2008, Yakushima Vision 21 in 2013, and events related to the relocation of Kamigamo Shrine in 2015.

She is an art planner always striving to make art events better experiences for both artists and those involved. She considers regional development, retail expansion, and cultural heritage all within the framework of art, and engages with each project on an individual basis through her characteristic planning and physical ability. Her children’s workshops are also well established. She is the co-author of “Designing Time” (2015).
■Spectrum File Archives■
Spectrum File ー 01 北上伸江/Nobue KITAGAMI
推薦者:金澤韻(インディペンデント・キュレーター)

Spectrum File ー 02 東京大学山中研究室/Yamanaka Laboratory, Institute of Industrial Science, the University of Tokyo
推薦者:松田 朋春(スパイラル チーフプランナー)

Spectrum File ー 03 中山晴奈/Haruna Nakayama
推薦者:ネダ・ショーン&クリストフ・ショーン(schön und söhne 共同経営者)

Spectrum File ー 04 荒牧 悠/Haruka Aramaki
推薦者 杵村史朗 (Artistic Director)

Spectrum File ー 05 林 響太郎/Kyotaro Hayashi
推薦者 杵村史朗 (Artistic Director)

Spectrum File ー 06 植野康幸/Yasuyuki Ueno
推薦者 栗栖良依 (スローレーベル ディレクター)

Spectrum File ー 07 Aki Inomata
推薦者 サンソン・シルヴァン(アンスティチュ・フランセ東京 文化プログラム主任)

Spectrum File ー 08 スズキユウリ/Yuri Suzuki
推薦者 田中みゆき(日本科学未来館)

Spectrum File ー 09 髙田安規子・政子/Akiko & Masako Takada
推薦者 難波祐子(キュレーター)

Spectrum File ー 10 Juz Kitson ジャズ・キットソン
推薦者 キャサリン・フニョー & ダニエール・ロブソン (ArtsPeople 共同運営者)

Spectrum File ー 11 SLOW MOVEMENT
推薦者 吉本光宏