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naomi & goro《CAFÉ BLEU SOLID BOND》リリース・インタビュー

期間:03.06〜
会場:SPIRAL RECORDS

ジャズ~クラシック~ブラジル音楽を基調に、クラシック・ギターの演奏を軸とした、ジャンルを越境するインストゥルメンタル作品《GLASHAUS》を<SPIRAL RECORDS>からリリースした作曲家・ギタリストの伊藤ゴローと、
透き通るように美しい歌声で、聴き手を至福のひとときへと誘うヴォーカリスト布施尚美による日本を代表する
ボサノヴァ・デュオnaomi & goro。通算10枚目の節目となる新作は、The Style Councilの1984年にリリースされた1stアルバム《CAFÉ BLEU》を丸ごと1枚フルカバーした話題作。そのリリースを記念して、プロデュースとアレンジを手掛けた伊藤ゴローに、Paul WellerやThe Style Councilへの思い、新作のレコーディングの模様などを訊いた。

naomi & goro《CAFÉ BLEU SOLID BOND》
品番 : RZCM-59262
発売日 : 2013.3.6
税込販売価格 : ¥3,000
形態 : CD
レーベル : commmons

CAFÉ BLEU SOLID BOND特設サイト
naomi & goro オフィシャルHP
naomi & goro オフィシャルfacebook


vol.1 アルバム・フルカバーのきっかけ / vol.2 レコーディングについて
vol.1 アルバム・フルカバーのきっかけ
——Paul Weller, The Style Council, 《CAFÉ BLEU》をめぐって



Q. 単刀直入ですが(笑)、なぜアルバム・フルカバーだったのですか?

伊藤ゴロー(以下G)
naomi & goroでは、カバーというのは多いんですよね。
ボサノヴァのスタンダードを演奏するのもカバーといえるし、基本的に誰かの曲を演奏することが多いんですね。
なので、カバーするにしても、いつもと違うことをやりたいと思って。
そこで、「アルバム・フルカバーいうのは聞いたことがないな」とそこからアイディアが浮かんだんです。


Q. そこで取り上げたのが、The Style Councilの1stアルバム《CAFÉ BLEU》。

G. これにはヒントがあって、ある人に「この2曲目の"The Whole Point of No Return"をカバーしてみれば?」って
ラフにいわれて。で、「自分がやるなら、全曲やるよ」って、勢いでいってしまって(笑)。
<commmons>の皆にプレゼンしたら「理由はなんですか?」とかあれこれやり取りがあって、
<commmons>のA&Rの瀬川さんと藤村くんも乗ってくれて、この企画が通ったんですね。
2人とも以前ロンドンに住んでいたことも良かったのかな?


Q. 以前にnaomi & goroとして、ポップスのカバーをしたい、ということをいっていましたよね。

G. いや、確かそのときは「演歌」って言ったんじゃないかな?
ポップスは今までにも2006年にリリースした《HOME》で、アルバム1枚ポップスのカバーやってはいたの
ですが、naomi & goro & 菊地成孔としてリリースした《calendula》(2011)で、Hall & Oatesや、
Prefab Sproutとかを取り上げた流れもあって、またボサノヴァと違う、ポップスのカバーというのを
やりたいという気持ちがうまれてきたんですね。


Q. The Style Councilの《CAFÉ BLEU》って、非常にエクレクティックで、ごちゃ混ぜ感がありますよね。
そういうものなんですけど、それぞれの音楽的要素の灰汁のようなものが、見事に取り払われている風に
感じられるんです。この感覚って、ゴローさんの音楽の全体にも通底する気がするんですよね。
こういう「エクレクティックな感覚」、という意味での影響はありますか?

G. はじめて聴いたときは、ロックとかを聴いていた時期で、
(The)JamのPaul Weller = ロックの人、っていうイメージがあったのですが、
これが出たときにびっくりしたんです。色々な音楽が、例えばジャズやニューウェーブがあって、
ラップも入ってる。当時、ロックのフィールドの中では、このようなタイプのアルバムは
なかったような気がする。


Q. 当時としては衝撃的。

G. そうですね。それから、どんどんミクスチャーな音楽が生まれていく流れが出来てきて。
ロックというカテゴリーを超えて活動するアーティストが増えて、それが今では当たり前になっている。
そういう感覚を知ったというか。
色々な音楽があって、「そういうの(多様な要素を混ぜること)をやってもいいんだ」って、
思わせられたというかね。いつも聴いているわけではないけど、たまに引っ張りだして聴いて、
刺激になる作品というか。


Q. 不思議なアルバムですよね。

G. リリースされた当時は色々いわれてましたね、Paul Wellerは。
ロンドンで流行っていたものをいい所取りした「サンプラー」みたいな
ニュアンスで批判されていたところもあった。でも、大ヒットしたんだよね。
特に日本では相当売れたし。


Q. そして、しっかりと名盤として残ってますね。
ゴローさんにとってこの作品との出会いは、「ボサノヴァ以前」ですよね?

G. いや、ボサノヴァは聴くのが早かったんだよね。中学校くらいから聴いてて。
演奏はしてなかったけれど。《CAFÉ BLEU》を聴いて「なるほどね」、と思った。
こういうのがあるんだと。自分の音楽を拡げてみようと思ったというか。
そういう意味では、影響はあるかもしれないですね。


Q.「色々混ぜてもいいんだ」という感覚ですよね。

G. そうですね。


Q. 実際にカバーしてみて、《CAFÉ BLEU》に対する印象が変わったりとか、
あらたに気がついたことなどはありますか?

G. 本当に様々なんですよ、楽曲が。
今だったら一曲ヒップホップが入っていたりとか、ジャズのインストが入っていたりとか、
自然に感じることが出来るけど。The Style Councilの曲はポップでソウルフルに聴こえるけど
Paul Wellerのロック魂的なところが沢山あって、「そうなんだ」と実感させられる。
サラって聴くとソウルっぽいイメージの曲も意外とロックな構造をもっていたり。
節まわしだったりコードとか。


Q. Paul Wellerの節まわしって、独特ですよね。

G. 独特だね。Paul Wellerもそうだけど、The Style Councilの曲のカバーって、実は凄い少ないんだよね。


Q. カバーする側からすれば、ハードルが高いんですかね?独自性が強過ぎるというか。

G. ひとつには、歌詞が前向きじゃなくて、暗いんだよね。
"My Ever Changing Moods"(6曲目と、14曲目にもボーナストラックとして収録*1)
ラブソングだったらいいな、っていうくらいのメロディでも、そういうんじゃないというね。
あとPaul Weller独特の節まわしで楽曲が成立している部分も大きいから、なかなかカバーし難い。
ラブソングじゃないし。そういう意味では、Paul Wellerは常にロックだよね。


Q. ゴローさんとしても、ロック魂を込めたと(笑)。

G. いつでもそうなんだけどね、いってみれば(笑)。
カバーしてみて、とても勉強になった、というのが実感としてあるかな。


Vol.2 に続く



*1 The Style Councilははじめに"My Ever Changing Moods"12インチのバンドバージョンをリリースし、
その後アルバムにピアノバージョンを収録した。



3月13日公開

vol.2 レコーディングについて
——アプローチ・プロセス・コンストラクション

Q.
レコーディング時に意識していたことなどは、ありますか?
G.
最近プロセスも大事だと思っていて。個人的にはね。
やっていくなかで、いろいろと発見があるし、勉強になるんですよね。
「なるほどね、なるほどね」って。「こういう構造なんだ」、とかね。

Q.
「実際にやってみて」、が重要ですよね。
G.
そう。実際に録ってみて、「なるほど、なるほど」って感じられたのが面白かった。

Q.
実際にレコーディングする前から、ボサノヴァとの接合点のようなところは、見出していたのですか?
ブラジルの音楽も同様に、多様な要素を含んでますよね。
G.
そうね、なんとなくうっすらと。でも、うまく繋げられるな、というのと、無理っぽいけどやるしかない、
というふたつがあったかな(笑)。ある意味、強引なところもあったというか。
naomi & goroはヴォーカル・ユニットだから・・・・。

Q.
インストが何曲も入ってますからね(笑)。
G.
そう。オリジナルは13曲中5曲。インストは1人でやるからとりあえず置いておいて、まずは歌物と思っていたので、仕上がりの予想がつかないまま進めていきました(笑)。でも、やっていくなかで、Paul Weller自身にも、音楽的に明確なコンセプトがなかったのでは?と感じたんです。
そのときに自分の好きなものを全部詰めたというか。

Q.
一枚にかなり詰め込まれていますよね。
G.
(オリジナルは)長い時間をかけてね。彼らはシングルでリリースをかさねながら、アルバムとしてまとめたから。だから、これを短期間で仕上げるのは苦労しましたね。あまりにも一曲一曲が違いすぎるから。

Q.
やっているなかで、色々と試行錯誤をかさねていったと?だいぶ解体して再構築している曲もありますね。
G.
「原曲よりも良くしてやろう」、と料理した曲もありますね。本当は原曲を変えるのはそんなに好きなタイプではないのですが、自分たちの良さも出るように、オリジナルに忠実にしたものと、ガラっとアレンジを変えるものと、分けて考えましたね。色々と解体していくと面白い発見があって。

Q.
(The) Style Councilが、色々な要素を混ぜつつ、自らのものに昇華したような仕方で、naomi & goroもオリジナルのマナーは受け継ぎつつ、自分たちのものに仕上げた印象を受けます。今までの(naomi & goroの)イメージとの違いもありながら、しっかりとnaomi & goroのものにもなっている。
G.
尚美ちゃんの歌があってこそ、naomi & goroだからね。それと、今回はオリジナルの曲をボサノヴァにするっていうお題を自分に課さなかった。本当はそういう大きな縛りがあると楽じゃないですか?なんとかボサノヴァにするっていう逃げ場があるんですけど、自分で「縛り」を作らなかったから、それが逆に自分の首を絞めたところはあるんですけど(笑)。瀬川さん、藤村くんに「やっぱこの曲なしにしない?」とか「やっぱベスト盤にしようか(笑)」とか言ってみたり。

Q.
それは、あらかじめ決めていたのですか?
このアルバムをカバーするなら、「より自由なアプローチで」という。
G.
そうですね。「縛り」を取った方が良いかなと。
「カバーで○○をボサノヴァにしてみました」、というのとは違うかたちにしたかったんですね。

Q.
naomi & goroとしては、ポップスの路線でも手応えを感じたと?
G.
すごい大変だったけどね。多分、naomi & goroだから出来たというか。尚美ちゃんは何でも柔軟に「はーい」っていって、歌ってくれるから(笑)。「ラップがあるけど」っていっても(8曲目に収録の"A Gospel"で初のラップを披露)しっかりとやってくれるし。

Q.
naomi & goroの10枚目のアルバムという節目でもあるかと思いますが、コトリンゴなどお馴染みのコラボレーターとともに、あらたな顔合わせも功を奏していますね。SOIL&"PIMP" SESSIONSの秋田ゴールドマン(b)や、みどりん(ds)、坪口昌恭(pf)など、ジャズの腕利きとして知られる強力なメンバーです。
G.
秋田くんとは《calendula》のときに参加してもらって、またやりたいなと思っていました。みどりんはSOIL&"PIMP" SESSIONSでは激しいプレイのイメージがあるけど、いざ一緒にやってみたら繊細なプレイも素晴らしい。それにこの二人はJ.A.M.というバンドもやっていますからJ.A.M.繫がりで。坪口さんはベテランなので、しっかり支えてくれる感じ。そして的確。

Q.
今後はライブも考えているんですか?
G.
これをライブで再現するのはなかなか難しいんですが、アルバムの曲をレコーディングメンバーで演奏する
ライブが出来たらなと。

Q.
豪華なライブになりそうですね。楽しみです。
今日はありがとうございました。
G.
ありがとうございました。

(了)



【naomi & goro】
透き通るように美しい、天使の歌声をもつ布施尚美と、作曲家、プロデューサーとしても活躍中のボサノヴァギターの名手、伊藤ゴローによるボサノヴァ・デュオ。世界的に見ても、いま最もジョアン・ジルベルト直系のサウンド言われ、ジョアン・ジルベルト・マナーをふまえたギターの弾き語りというシンプルなスタイルで、コードの響き、言葉の響きを大切に、カバー曲からオリジナル曲まで演奏。
 2009年にブラジル・リオデジャネイロで録音したアルバム《Bossa Nova Songbook 2(ボサノヴァカバー集)》《passagem(オリジナルアルバム)》をリリース。ピアノに坂本龍一、チェロにジャキス・モレレンバウムも参加。韓国、台湾でもアルバムをリリースし、2010年4月に韓国ソウルで行われたワンマンホールライブはソールドアウトの大成功をおさめる。2011年7月naomi & goro & 菊地成孔名義でアルバム《calendula》をリリースしヒットを記録。
2013年3月6日にスタイル・カウンシルの1stアルバム《CAFÉ BLEU》をフルカバーした新作《CAFÉ BLEU SOLID BOND》をリリース。
また、伊藤ゴローは作曲家、プロデューサー、ソロ・プロジェクトMOOSE HILL (ムース・ヒル)としても活動、映画やドラマ、CM音楽も手がけ、国内外でのアルバムリリース、ライブを行う。〈commmons〉よりリリースしたPenguin Cafe Orchestraの《tribute》《best》や原田知世直近の2作《music & me》《eyja》などもプロデュース作品。青森県立美術館にてサウンドインスタレーション「TONE_POEM」の発表、方言を使った作曲のワークショプ、原田知世との朗読会「on-doc.(オンドク)」を行う。
2012年4月に2年ぶりとなるクラシックギターをメインとしたソロアルバム《GLASHAUS》を〈SPIRAL RECORDS〉よりリリース。7月21日~9月17日に開催された青森県立美術館の夏の企画展《Art and Air ~空と飛行機をめぐる、芸術と科学の物語》のサウンドトラックも担当。〈P-vine Books〉より9月7日にリリースされた展覧会カタログには6曲録り下しのCDを収録。