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トップページ|インタビューVol.2 川瀬浩介|
スパイラルが出会った気鋭のクリエイター、アーティスト達。
彼らの制作のきっかけや背景、その活動を尋ね、ものづくりの「これから」を共に探っていきます。

TALK WITH SPIRAL Vol.2
聞き手/ポートレート撮影 岡田勉(スパイラル チーフキュレーター)

第3回SICFグランプリ作品
(撮影 市川勝弘)
CM、WEB、イベントへの楽曲提供と並行して、作曲家/アーティストとして作品を発表する川瀬浩介さん。2002年、第3回SICF(スパイラル インディペンデント・クリエーターズ・フェスティバル)「Long Autumn Sweet Thing」を発表しグランプリを受賞。その後、スパイラルでの数々の企画に参加しています。

2005年日本国際博覧会(愛知万博)では、パフォーマンス・ショー「Creative Japan」のオリジナル・サウンドトッラックを制作・提供、“愛・地球広場 エキスポビジョン”で上映した「PopulouSCAPE(ポピュラスケープ)」の音楽を担当し、会期中連日、閉場を彩る映像と音楽を提供していました。ベアリングに用いられる球=鋼球を使って自動演奏される楽器、「BEARINGS GLOCKEN」を2006年に発表(制作協力:日本精工株式会社)するなど、音楽からの視点で、独自の作品を制作し続けています。
スティーヴィー・ワンダーがピアノを前に歌う姿をテレビで見て、突如音楽に目覚めた川瀬さんは、高校時代をカシオトーンでひとり楽器の練習と音作りに励む日々だったという。
岡田 音楽を本業にしようと思ったきっかけは?

川瀬 本業にしなければと思ったのは、親にヤマハのシンセサイザーを買ってもらってから。 「これで稼がなければ」と思ったんです。弾くだけの愉しみでひとりもんもんとやっていたり、家に置いておくだけでは無用の長物だと思ったんですよ。本業にするなら音楽の専門学校に行くかなと。ロックやジャズの専門学校なんですが、そこでプロのギタリストの師匠に出会って。なぜか、その人がやっているバンドに引き込まれたんです。修行の一環としてキーボードやってみろと。ほぼ何にも出来ない状態だったのに。

岡田 でもロックバンドってそうやって始まるんじゃない?

川瀬 それがロックじゃなくて、ジャズ・プログレみたいなジャンルだったんです。譜面には見たこともないようなコードネームが山ほど出ているんですよ。リハーサルにはじめて連れて行かれた日の、なにか試されているみたいないやーな感じ、いまでも覚えています(笑)。
それを2,3年やって。そこでいろんな礎というか、考え方の基礎的なことが出来上がった。

岡田 そうやってバンドとかやっていて気がついたら環境音楽やったり、CMをつくったり。どういう経緯でそうなったんですか?

川瀬 音楽で生きていく方法を考えていたときに、環境音楽に出会って。90年代前半くらいにスパイラルの館内の音楽や、音楽レーベルnewsicで、世の中にこんな風に環境音楽との関わり方があって、実践されている例があるんだと知ったんです。でもその潮流はバブルの崩壊とともに過ぎ去り、この道でも生きていけそうにない。
そこで、テレビのサウンドトラックなどをやっている、ある作曲家の先生のアシスタントに就いたんです。学生時代に最初の師匠のバンドのレコーディングを手伝うなど、プロのまねごとみたいなことはやっていたんですけど、もう一回、世の中と実際関われるところで勉強し直すかと、一年くらいやりました。そこで商業音楽のイロハや、実際、自分の作品がお茶の間に流れてくるときにどういう気持ちになるのかというのが具体的にわかった。 もともと聞いていた音楽も歌中心のものより、サウンド全体で聞かせていくほうが多かったから、サウンドトラックとか映像の関わりでやっていくのもあるんじゃないかなとおぼろげに思っていたんですよ。そんなとき、たまたま中学のときの知り合いが広告代理店にいることがわかって、デモテープを聞いてもらったら「仕事やってみる?」みたいなことになって。ちょうどインターネット黎明期で、今みたいな高速の回線がないころ。企業のイメージ映像に音をはめるというのが最初の自分の仕事です。そこで心地よさを味わったんですよね。自分の仕事で世の中とつながる実例ができたのと、映像のタイミングに細かく音をはめていくということがとても自分に合っていたんですよね。

岡田 川瀬さんの周りのいろいろな人がチャンスや仕事をくれたんですね。活動の場を探しているクリエイターや若いアーティストたちに、どのようにしてチャンスをつかめばいいのかというようなこと言ってあげられるといいなと思います。もちろん人柄もあると思いますが、川瀬さんの人との出会い方というのは、なにかコツのようなものがある気がするんですよね。恐れを抱くことなく人と会ってみる、話をしてみるとか?

川瀬 でもね...。僕そんな感じは一切ないですけどね。割と「果報は寝て待て」みたいな。「人事を尽くして天命を待つ」タイプなんですよ(笑)。

岡田 人事を尽くすんでしょ?それを聞きたいな。

川瀬 最初にSICFにアタックした時もまさにそうですが、僕はどちらかというと、作品の実物を見せて「どうですか?」という方なので。それで分かってもらえなかったら仕様がないって思っているんですよね。まず作品ありきな気がしています。僕の場合、展示でも音楽を発表するときでも、実際お客さんが見てくれて「よかったな」って思ってくれるところまでのドラマみたいもののイメージを固めて、頭の中でできあがらないと、とても人には見せられない。逆に言えばそこまでできあがれば、もし評価をもらえなくても、満足っていう感じが僕の中ではあるんです(笑)。
伝わらなかったことには原因があるのでしょうけども、見せ方をちょっと工夫すればいずれ伝わるものなんだろうなって思ってやっています。

岡田 8月18日から水戸芸術館で開催するひびのこづえ展のオープニングライブで音を提供するんですよね?


ひびのこづえ performance
・・/・・/・・ク(つづく)
音楽:川瀬浩介
2005年11月
於スパイラルガーデン
(スパイラル1F)
川瀬 こづえさんのイメージや、キーワードを拾い、衣装のスケッチを見ながら、ダンサーの動きを想像して実際に本番のイメージにつなげられるような作業を延々としていくって感じですね、要求にも答えつつ、自分のいいところも紹介したいなと。却下されることも有りますけどね(笑)。

岡田 共同作業は割と多いですよね。そういう話は大歓迎なんですよね?

川瀬 一人の作品ではお金がかかりすぎてそんなに頻繁にはつくれないので、準備が整うまでの間は共同作業が多くなりますね。そいうときは、CMの仕事などをやってきた経験が活かされます。もとから備わっていたのかもしれませんが、各案件に対して、どうするのが一番喜んでもらえる人が多いのかなということを考えるのですよね、もちろん正解はないんですけど。さっき言ったイメージするところを。
2005年11月スパイラルガーデンにて開催した「Smooth Sailing for BEARING_NSKベアリングアート展_」で、川瀬さんは、日本精工のエンジニアの技術協力によって制作した「BEARINGS GLOCKEN」を発表する。

岡田 (「BEARINGS GLOCKEN」では)与えられた条件の中で、しっかりと自分の芸風に引き寄せて仕事をするんだなと、とても感心したんですよ。川瀬さんもチャレンジングだったけど、技術者たちにとっても、良い課題を提供出来たのでは、と思います。


BEARINGS GLOCKEN会場風景
(撮影 石塚元太良)
川瀬 (提案に対して)2ヶ月くらい音沙汰がなかったので、「無理だ」と言われて終わりかと思っていました(笑)。

岡田 凄いですよね、日本の技術者って。

川瀬 日本精工株式会社の冠のついた展覧会で、日本精工さんの技術を結集したかたちになってよかったです。僕が、ずっと昔からあたためていた曲の組み方のアイデア「断片的な旋律が組み合わさって曲を成す」っていうのを、ここでやったら良いことになるだろうと思って、やったら−−、

岡田 感動的だったよね。

川瀬 あの展示で、新しい価値観が加わりましたよ。僕、最初の光の作品(音と光のインスタレーション「Long Autumn Sweet Thing」2002年)を作った時は、今よりも青臭い考え方があって、光の抽象的な世界だしそこからドラマを見いだせるのって様々な経験を積んだ大人だけだから、自分はこれから、そんな「大人のため」の仕事をしていくんだろうなと想像していたんです。 それが「BEARINGS GLOCKEN」は、こどもの食いつきがすごかった。僕のキャリアの中でこどもにこれほど喜んでもらえる作品が生めると思っていなかったので、新しい価値観が生まれましたね。それまでは、「大人のためにやるんだ」「幼児お断り」みたいなつもりでいたんですけど、こどもにも伝わるなんて、凄いことだなと思ったんですよ。

岡田 普遍的な何かがあったんですね。

川瀬 そう、それを探しているんですよね、僕は。普遍的なものは何か。最初の光の作品もそうです。普遍的な美とはなんだろう。美しいとはなんだろうと思って、光の作品を作っていましたから。


BEARINGS GLOCKEN会場風景
(撮影 石塚元太良)
岡田 「BEARINGS GLOCKEN」は、欲をいえば装置としての生々しさがあるというか、まだ美しくないわけだよね。

川瀬 技術的課題を検証するだけで製作期間が終わっちゃたんですよ〜。

岡田 やるとしたら美しくするということですよね。

川瀬 それが出来るといいですよね。

岡田 これからやってみたいことはどんなことですか?

川瀬 音楽って目には見えないし形のないものなんですけど、音として身体で受け止めたときに感じる広がりというか、色合いというか…すごく創造力を掻き立てるものだと思うんです。耳にしたらある風景や記憶が蘇ってくるような、そんな音楽を作りたいですね。それから「BEARINGS GLOCKEN」もそうですが、そこにある“もの”の迫力に拘りたくなっているんです。その上で、情報を提供する手段としてインターネットをうまく活用していきたいですね。

岡田 川瀬さんが今まで歩んできたような、チャンスとか出会いとかを提供する装置としてスパイラルバンクを活用してもらいたいですね。インターネット上でいろんな情報のやりとりやコミュニケーションが快適にできるようになったことで、音楽の仕事の幅も非常に広がっているように思うんです。ところで、川瀬さんの音楽や作品をもっと知りたいと思ったときに入手する術は?

川瀬 DVD「PopulouSCAPE」がスパイラルのオンラインストアから入手できます。あと僕のサイトで、ほぼキャリアの全てを聞けるような状況にしてあります。リリースしたい!という方がいれば「どうですか?」(笑)。
文・構成:IT IS DESIGN

川瀬浩介

(かわせこうすけ)
1970年 京都生まれ 東京在住
2002年 第3回SICF(スパイラル インディペンデント・クリエーターズ・フェスティバル)グランプリ受賞/フィリップモリスアートアワード2002入賞(“n” ensemble orbとして)
2003年 アジアデジタルアート大賞入賞
2004年 NHKデジタルスタジアム入賞、NHKデジスタアウォード2004ファイナリスト入賞など。
2005年 日本国際博覧会(愛知万博)出展作品「PopulouSCAPE」、パフォーマンス・ショー「Creative Japan」の音楽を担当。
2006年 アジアデジタルアート大賞 デジタルデザイン部門 入選(Team PopulouSCAPEとして)Smooth Sailing for BEARING_NSKベアリングアート展_にて「BEARINGS GLOCKEN」を発表。
その他、バレエ、パフォーマンス作品への楽曲提供、多様なジャンルのアーティストとコラボレーションなど多数展開。
メッセージ
風や雨、鳥の声などの自然の音、人が出す様々な生活音、騒音。そして音楽。僕らは、音に包まれて暮しています。身の回りに在る「音」にそっと耳を傾けてみる−−音の在り方に敏感になると、周囲の気配や状況の変化が聞こえてきます。そうした習慣が身につけば、注意力や観察力、洞察力...それから審美眼...さらに付け加えれば、気配りやおもてなしの心も養われるはず。そして、誰よりも優しくなれる...僕は、そう信じています。


イベント情報
「ひびのこづえの品品 たしひきのあんばい」展 関連企画プログラム
ダンス・パフォー
マンス音楽担当
川瀬浩介
近藤良平 日時 2007年 8月18日(土)12:30〜/15:00
森山開次 日時 2007年 9月23日(日・祝)12:30〜/15:00〜(2回公演、定員:各回100名様まで)
会 場 水戸芸術館現代美術ギャラリー 第5室
Vol.8:藤井秀全
自身が目指す「光」の表現を探求する。
Vol.7:月岡 彩
様々なプロジェクトを通して広がる表現。
Vol.6:Luft / 真喜志奈美、溝口智子
これからの「ものづくり」の有り方を探して。
Vol.5:石塚元太良
社会と、自分と対話する道具としてのカメラ。
Vol.4:佐藤誠高
手作業から「つくる」を実感する。
Vol.3:佐藤好彦
「人はものを作っていくものなんだ」と漠然と刷り込まれた。
Vol.2:川瀬浩介
普遍的な美とはなんだろう。美しいとはなんだろう。
Vol.1:鈴木仁子
つくり続けることで、自分の輪郭が見えてくる。

岡田 勉 (おかだ つとむ)
スパイラルチーフキュレーター。
1963年生まれ。1988年より複合文化施設スパイラルのキュレーターとして現代美術展の企画、パブリックアートのプロデュース、2005年「愛・地球博」アートプログラム事業キュレーターなどを務める。
2007年、葉山有樹展「A Pattern Odyssey」を企画し、スパイラル展に続き、フィンランドのデザインミュージアム(ヘルシンキ)巡回展を開催。


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