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CREATOR’S INTERVIEW Vol.2/後編

2024.12.06-12.25

作り手の想いを綴るCREATOR’S INTERVIEW。

第2回目のゲストはSpiral Xmas Market2024の
キービジュアル・装飾を手がけた
ネルソン・ホーさん。

前編では今回のクリスマスマーケットに関してお聞きしました。

岩絵具を使い、作品を描くネルソンさん。後編では、彼の幼少期や日本画に出会ったきっかけなど、ネルソンさんの「描くこと」に対する想いを深堀っていきます。


子どもの頃から好きだった「描くこと」
 


ーネルソンさんがアーティストになったきっかけを教えてください。

ネルソンさん:子どもの頃からずっと描くことが好きだったんです。家の中に、何を描いてもいい白い壁があって。そこに、クレヨンなどで絵を描いて、余白がなくなったらまた真っ白にして……。それが絵を描いていた最初の記憶かな。その後は、ポケモンが好きだったので、毎日ポケモンを真似して描いたり、ドラえもんやパワーパフガールズなどのキャラクターを、友達から頼まれて描いたりしていました。


ー子どもの頃から現在まで、ずっと絵を描くことが好きだったのでしょうか?

ネルソンさん:そうですね、絵を描くことはずっと好きで、美術科のある高校に通っていました。授業では美術史を学んだり、油絵やデッサン、ファッションもやっていました。服をつくって、着て。他にもデザインをやったり、立体作品をつくったり、どれも少しずつですが、本当にいろいろな勉強をしました。そのなかでもやっぱり絵を描くことが好きだったので、美大に進学しようかと、多摩美術大学に入ったんです。

 


日本画との出会い
 


ー日本画専攻を志望して、日本の美術大学に進んだのでしょうか?

ネルソンさん:日本でアートを学ぶことにしたのは、正直に言えばたまたまだったんです。高校卒業後は、アートだけでなく新しい言語も勉強したかったので、フランスやドイツも候補として考えていました。日本という選択肢は3番目だったんですよ。でも、両親から治安のよい日本を勧められて、日本に来ました。 美術予備校に通い始めて、せっかく日本にいるなら、日本画をやってみようかなと。ただ、予備校の先生に「ネルソン、『日本画』とは何かわかりますか?」と聞かれたときに、「わかりません」と答えたら、「それはダメです!」と言われてしまって(笑)。 ちょうど山種美術館で開催されていた加山又造氏の個展のチケットを頂いて、観に行きました。そしたら、すごく感動して……作品にとても興味がわいて、日本画が好きになりました。


 

ーネルソンさんは岩絵具で現代社会の問題を記録するというテーマで作品を制作されているんですよね。

ネルソンさん:そうですね。最初に、日本画の歴史を知りたいと思ってルーツを辿ってみたんです。敦煌の壁画や、寺で描かれたようなもの、もっと遡ればフランスにあるラスコーの壁画も有名ですよね。そこまでいくと、原始人が岩絵具で壁画を描いている。昔から人類は岩絵具を使っていて、自分の気持ちや「今日牛を捕まえたよー!」という日記のような内容だったり、自分の家族に関することだったり、さまざまなことを描いて記録している。そういうところがとてもおもしろいなと思ったんです。岩絵具の歴史はとても長いんですよね。そこで、現代に生きている自分が昔の人と同じように、岩絵具を使って記録したらおもしろいんじゃないかなと思いました。それがきっかけかもしれないですね。


 

ー岩絵具で描いた赤い線が印象的な作品も多いですよね。以前、《毎日、君に手紙をかいてあげる》という作品についてのお話のなかで、「赤い糸」という言葉の意味合いが好きだと仰っていました。ご自身で描く赤い線には、特別な意味があるのでしょうか?

ネルソンさん:大学生のころから赤い糸や線が好きで作品に取り入れていました。特に意識して描くようになったきっかけは、《毎日、君に手紙をかいてあげる》という封筒の作品です。封筒にある郵便番号を書くための枠線が赤いのがおもしろいなと思って、赤いペンを使って描いてみたらいい感じになって。さらに「赤い糸」の意味合いを知って、もっと好きになりました。「どんな人間でも見えない赤い糸がつながっている」。作品のなかでも、赤い糸がつながっています。同じように、自分の作品と鑑賞者との赤い糸=つながりとして描いています。

 


小さなネルソンが隣にいるような感覚で
 


ーインタビューの前編では、今回のSpiral Xmas Marketのテーマに沿って、子どもの頃のクリスマスと、大人になってからのクリスマスについてお伺いしました。絵を描くこと、作品をつくることに置き換えてみると大人になって変わったと思うことはありますか?

ネルソンさん:大人になってから、ワクワクしたり、期待することが減った気がしています。子どもの頃ってどこに行っても何をしても初めての経験ばかりだから楽しい。まっさらな紙に描いていくように、何を描いても楽しいという感覚だったんです。 でも最近は、子どもの頃のように「好きな色だから描く」とか「好きなモチーフだから描く」という純粋な気持ちが薄れてきているように感じることもあります。

だからといって、大人になることは悪いことばかりではなくて、子どもの頃とは違う角度で物事を捉えることができる。大人になったからこそ、気づくことがあるというか。 でもやっぱり、大人になっても、子どもの頃の「絵を描くことが好き」という気持ちを忘れないで、作品を描き続けていきたいです。


 

ー好きなことを仕事にする、その先の葛藤もありますよね。絵を描くことが純粋にただ好きだった子どもの頃の気持ちを留めるために、意識していることはありますか?

ネルソンさん:仕事中は、小さなネルソンが隣にいるような感覚で、彼と一緒に作品を描いています。

最近、母と話したときに、「子どもの頃から好きだったものを、大人になって仕事としてできていることはとてもラッキーなんだよ」と言われて、確かに好きなことを実現できているってとても幸運だな、と思いました。もちろん仕事は仕事ですが、幼い頃の純粋に楽しむ気持ちを大切にしようと。もし今、6歳のネルソンにまだ絵を描いているよって言ったら、すごく喜んでくれるんじゃないかと思います。

今後も絵は絶対に描き続けたいですが、絵だけでおしまいというのは寂しいというか、惜しいなと思ってきていて。コンセプトを合わせながら、インスタレーションや他の表現方法も取り入れていきたいです。そのほうが、アーティストとしても楽しいし、これからも好きなものをたくさんつくりたいなと思っています。

 

■ Profile
ネルソン・ホー
1998年 ペナン・マレーシア生まれ、東京都在住。
2022年 多摩美術大学 日本画専攻 卒業。

古代人がメッセージを伝えたり、当時の事件を記録したりするために岩絵具を使って壁画を描いたように、メンタルヘルスやLGBTQへの差別など、現代の社会問題を記録するツールとして、岩絵具で絵を描いている。そして、キャンバスから展示空間全体へと物語を広げ、コンセプトやシリーズに応じて、刺繍、陶芸、映像、音声などを使い、観客がより絵画の世界観に入りやすくなるようなインスタレーションを制作している。

【主な経歴】
2022年 「Memory is a Garden」GALLERY ETHER(東京)
    「アートアワードトーキョー丸の内」審査員建畠晢賞(東京)
2023年 「FOCUS LONDON」Saatchi Gallery(ロンドン)
    「KYOBASHI ART WALL」優秀作品(東京)
    「SICF24」スパイラル(東京)
2024年 「ART TAIPEI」台北世貿一館(台北)
    「赤い空に飛んでいた赤い鳥」KYOBASHI ART ROOM(東京)

  
Website
Instagram

Spiral Xmas Market 2024

会期:2024年12月6日(金)ー25日(水)
*会期中、18日(水)・19日(木)は展示替えのためクローズ。

会場:スパイラルガーデン(スパイラル 1F)
   東京都港区南青山5-6-23
 

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