スパイラルが主催する公募型アートフェスティバル「SICF*」の出展作家を中心に、ご紹介するシリーズ「SPIRAL Creators File」。
今回は、SICF24でスパイラル奨励賞を受賞した大谷陽一郎の作品をご紹介いたします。
大谷は、漢字で景色を作り出すような「視覚詩」を応用した平面作品を制作。作品《ki/u》のシリーズでは、「キ」と「ウ」という音節に基づく漢字を無数に配置することで雨が降る様を描いています。是非ご覧ください。
*SICF(スパイラル・インディペンデント・クリエイターズ・フェスティバル)は、スパイラルが主催する若手作家の発掘・育成・支援を目的とした公募展形式のアートフェスティバルです。
SICF web
SICF24受賞者紹介ページ
梅雨はなぜ「つゆ」と読むのだろうか。
その由来は「露」からとったとする説や、梅の実が熟して落ちる時期であることから「潰ゆ(ついゆ)」とする説などがあるらしいです。
どの説が正しいか定かではないものの、「つゆ」という音韻の響きには、柔らかく多分に水分を含んだような印象を受けます。
今回の展示では、5月末から7月上旬というまさしく梅雨の季節に展示する機会をいただきました。
展示作品である《ki/u》は、「キ」と「ウ」という音節に基づく漢字を無数に配置することで降雨を描いたものです。
「祈雨」という言葉の音を起点に「喜雨」「樹雨」「鬼雨」「雨期」「雨季」など雨にまつわる言葉を繋げていき、さらに派生させて50種ほどの漢字を使用しています。
漢字の形態、音節、意味が相互的に作用し合う、雨のイメージを介した新たな詩のようなものを作ろうと試みました。
「つゆ」の季節に呼応するような感覚で雨の景色を体感していただければ幸いです。
大谷陽一郎