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西野康造 「空のかたち」

2004.6.22~7.10
Photo:Katsuhiro Ichikawa

西野康造は、チタン、アルミ、ステンレス、鉄といった金属素材を用い、繊細なバランスで支えられた、動きのある巨大な作品を制作する彫刻家です。1992年、東京での初の個展をスパイラルガーデンで開催し、今回は3回目を迎えます。らせん状に吹き抜けるアトリウムと壁面の長さ20mのギャラリー部分からなるスパイラルガーデンの空間特性を熟知して創りあげる、ダイナミックな大型作品が並びます。彼は、1980年代から主にパブリックアートの分野で活躍し、野外での展示に評価が高い京都府在住の作家です。その作品はさまざまな美術館や施設でパーマネントコレクションとして展示されており、「越後妻有アートトリエンナーレ2000」(川西町、新潟)にも参加しています。

作品は、会場内のかすかな空気の流れを取り込んで、まるで動力源を内に有するかのようにゆるやかな動きをみせる巨大な彫刻です。その形状は時の流れを映し出すように、刻々と変化していきます。「動いているのか動いていないかわからないほどのかすかな動きは、見るというより感じるものなのかもしれません。僕の作品をみて、乗っているような感じや、ギャラリー空間自体が揺れ動いているような感じがする人もいます。動きを共有するという、ある意味雲や霧の中に動いているような感覚を提供できればいいですね。」と西野は言います。

並外れた大きさと動きを実現するために、西野は常に新たな素材と技術を探求しています。作品には加工性や強度といった理由から金属を使用することが多く、特にチタンの扱いにおいては権威とも言われる高い加工技術をもって、繊細かつダイナミックな作品を創り上げます。一見すると物理的に不可能と思われるデリケートな構造をもつ巨大な作品は、緻密な構造計算と経験、そして子供のころ木登りや川遊びなど、自然の中を駆け回った体験で培ってきたという感性によって生み出されています。

本展覧会では、鳥の翼や楽器をモチーフとした具体的表現の時代を経て、近年力を注ぎ込む抽象作品を展示しました。アトリウムからギャラリーにかけては、約7mの3つのパーツから構成される、モービルを逆さにしたような形態をもつ約15mもの長さの巨大なチタン合金の作品が出現。端にある1点の支点のみによって支えられ、やじろべのように微妙なバランスを保ちます。会場の空気の流れによって、ゆったりとしつつも、複雑で予測不可能な動きを見せます。

展覧会のタイトル「空のかたち」は、天に広がる空はもとより、空間や宇宙の宙(そら)のイメージからつけられています。「作品そのものよりも背景や空間のことばかり考えている」という西野。彼は昔、旅先で見た古代遺跡に大きなインスピレーションを受けました。遺跡の背後に広がる悠久の時の流れ、宇宙への続く青い空。ダイナミックと繊細が同居する作品から想定される緊張感とはまったく異なる、時空間に心と体が浮遊するようゆったりとした感覚は、そんな彼の作品に対する視点が表出させています。

■ 開催概要

主催:株式会社ワコールアートセンター
協力:アートコートギャラリー
企画制作:スパイラル

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