スパイラルが行う、次代を担う若手アーティストによるプログラム「art-life+」シリーズ。
第11回目は、京都在住の若手作家、梶岡俊幸による個展『The Birth Canal-未来へのうねり』を開催しました。
梶岡の作品は、和紙の上に鉛筆と墨で描くという技法で制作されています。一見真っ黒い絵のようですが、巨大な画面は膨大な量の鉛筆の線で埋め尽くされ、その上に大らかに墨が重ねられています。この闇夜に浮かぶ川面は、恐怖感や不安感を感じさせながらも、また同時にゆったりと包み込まれるような穏やかな安らぎも与えます。
作品:
「波間に」H103 × W73cm
高知麻紙、墨、鉛筆 2008年
Photo:Katsuhiro Ichikawa
本展では、スパイラルガーデンの吹き抜け空間(アトリウム)に510×890cmの巨大な作品がそそり立ち、スパイラルカフェから臨むギャラリーの両壁面にはH182×W1530cmと、H274×W920cmの長大な作品が立ち現れます。まるで映画「2001年宇宙の旅」に登場するモノリスのように、かつて出会ったことのないスケールと質感を持った空間が生み出されました。
夥しい情報が飛び交う現代では、あらゆる場所が白日の下にさらされていますが、実際には身近な景色の中に多数の濃い闇が存在します。世界は全てが既知ではないと自覚し、未知なる景色に出会ったときに不安を感じながらも、自分の足元を見つめ直し、立ち向かっていく強さの重要性を感じさせます。
タイトルの「Birth Canal」(産道)には、水面を描いた長大な作品が空間に屹立した時の光景を"運河=Canal"に見立て、そこから新しい何かが蠢き始める生命の根源としての混沌/闇/水、としての意味が込められています。予測のつかない時代だからこそ、自らの力で自らの道筋を見出し、日常をより豊かにしていこうというメッセージを放つ展覧会となりました。
展覧会タイトル:art-life+ vol.11 梶岡俊幸展 『The Birth Canal-未来へのうねり』
時間:11:00~20:00 会期中無休
入場料:無料
主催:株式会社ワコールアートセンター
企画制作:スパイラル