「lang/baumann」は、Sabina Lang(サビナ・ラング)とDaniel Baumann(ダニエル・バウマン)ふたりのスイス人アーティストによるユニットで、建築と作品がどのように作用しあうのかに着目し、展示空間そのものを作品に変換、鑑賞者を作品の一部に取り込む作品制作を得意としています。本展が日本での初めての展覧会となる彼らは、スパイラルガーデンに3種類のダイナミックな体感型のインスタレーションを設置、スパイラルの1F全体をひとつの作品として展示しました。
この展覧会を、「知性で鑑賞するだけでなく、見て触れて、感覚的に楽しんでほしい」と語るlang/baumannは、東京という町から、伝統的な文化を尊重する環境、コミュニケーションを重んじる風土、大通りの裏に広がる整った町並み、躍動感溢れる人々の行動を、またスパイラルという建物から、合理性や洗練されたデザインを強く印象付けられ、作品を制作しました。既存の建物のみならず都市空間の特徴を最大限に生かす、誰もが楽しめる新しいパブリックアートの構築と、全身で感じることができる展覧会を目指しました。
エスプラナードには、ブロンズ色の硬質なレリーフ約200ピースからなる「perfect #4」を壁面に設置。窓に貼り付けたブロンズ色のシートを通して差し込む柔らかく変色した自然光と、レリーフが放つ輝き、そして照明の人工的な光が交錯し、まるで登山家の言うホワイトアウトならぬ「ブロンズアウト」の空間が広がります。鑑賞者は眩しさで「屋外と屋内」、「自然と人工」などといった既存の境界線を見失い、見る者の固定概念を解きほぐします。
アトリウムには、大洋を思わせる青いバルーン状の作品「comfort #2」を設置。遠くから見れば小波のようにも見える作品は、空気を入れて膨張させることで豊かな表情を生み出しました。鑑賞者が作品に触れ、上に乗ることで、アートが帯びがちな「貴重さ、気取り、脆さ」といった先入観が払拭されます。ギャラリーとカフェは、複雑化した社会のコミュニケーションを「カオティックで秩序だったジグザグ」模様で表現したカーペット状の作品、「beautiful corner #4」を展示しました。
主催:株式会社ワコールアートセンター
助成:スイス・プロ・ヘルヴェティア文化財団
後援:スイス大使館
協力:株式会社サンゲツ、株式会社中川ケミカル
企画制作:スパイラル