1997 年以降、ヨーロッパや南米を中心に、これまで11作品のダンス公演を発表してきた、スイスを拠点とするコンテンポラリー・ダンスカンパニー「ジル・ジョバン」、の日本初公演を行いました。
「ジル・ジョバン」の作風は、身体を介してゲームのように互いのルールを作りながら生み出されるユーモラスな動きを特長とし、コンテンポラリー・ダンスの新時代を築く振付家の一人として、近年高い注目を集めています。本公演では、ジル・ジョバン初来日作品として2008 年3 月にパリ市立劇場の1,000 席を満員にした最新作「Text to Speech」を上演しました。本作は、世界各地で勃発する内紛や戦争を題材に、人と情報との関係性をダンサーの身体と映像や音声から流れるテキストによって描き出しました。
【「Text to Speech」解説】
大小のテーブルで静かにパソコンに向かう6 人の男女、張り巡らされたロープ、炎上するスクリーン。ここでは、パソコンから流れてくるニュースによって、パフォーマーは次第にそのバランスを失っていき、他者を、そして自分自身を傷つけていきます。これは、様々なメディアに取り巻かれて生活する私たちの間に存在する、"崩壊する個と個の関係"が紡ぎ出されるフィクションです。舞台上の出演者は、音声ソフト"Text to Speech"が読み上げる架空の紛争を語るニュースにシンクロするように踊ります。実際に起こっている紛争、情報として遠く離れた私たちの目や耳に届く増幅するニュースや映像が描き出す紛争のイメージ。それらが創り出すものは何か...。ここには、ジル・ジョバンからの明確な答えはありません。観客は、舞台に答えを求めるのではなく、舞台上に描き出される世界を見、<思考>するという形で作品に<参加>します。<世界>とはなにかを、観客自身が考えるきっかけを得るのです。
振付・舞台美術:ジル・ジョバン
出演:カンパニー ジル・ジョバン(ジャン=ピエール・ボノモ、リチャード・カボレ、スン・イン・クオン、ジル・ジョバン、スザナ・パナデス、ディアスルディ・ヴァン・デルメルヴェ)
音楽:クリスチャン・ヴォーゲル
舞台監督:上林英昭
主 催:株式会社ワコールアートセンター
共 催:財団法人山口市文化振興財団
後 援:スイス大使館
助 成:スイス・プロ・ヘルヴェティア文化財団
企画制作:スパイラル、山口情報芸術センター(YCAM)