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CREATOR’S INTERVIEW Vol.2/前編

Spiral Xmas Market 2024
2024.12.06-2024.12.25

作り手の想いを綴るCREATOR’S INTERVIEW。

第2回目のゲストはSpiral Xmas Market2024の
キービジュアル・装飾を手がけた
ネルソン・ホーさん。

幼い頃のネルソンさんのクリスマスのあたたかな思い出から、
今回のクリスマスマーケットに対する想いまで、お話を伺いました。


子どもの目から見たクリスマス
 


ー今回の企画で最初にネルソンさんのプランを拝見したときから、「子どもの目からみたクリスマス」というテーマがとても印象的でした。どうしてこのテーマにしようと思ったのでしょうか?

 

ネルソンさん:最近、たまたま昔の写真を見つけて。その写真のなかで子どもの頃のネルソンが楽しそうにサンタクロースを描いていたんです。

それを見たときに「子どもの頃はクリスマスが楽しみで仕方がなかったな」と思い出しました。同時に、大人になるにつれて、だんだんとクリスマスを楽しめなくなっていることにも気がついたんです。12月って仕事も忙しい時期ですし、家族も日本にいないから、クリスマスの意味がわからなくなってしまっていたんですよね。 でもそれって、自分だけではなくて、他の大人たちも同じではないのかと思ったんです。

だから、大人になった人たちに「クリスマスの魔法」を思い出してもらいたいと考えて、このテーマにしました。  

 

幼い頃のネルソンさん


ー今回のキービジュアルにも、クリスマスの訪れを待ち望んでいる子どもが描かれていますね。

そうなんです!スノードームの中のクリスマスツリーを眺めながら、「早くクリスマスが来ないかな。まだかな……」というような。純粋にクリスマスを待ち望んでいた頃の自分を思い出してもらいたいです。  

 


クリスマスを待ち望んでいたあの頃の自分
 


ーネルソンさんご自身は、子どもの頃どのようにクリスマスを過ごしていましたか?

ネルソンさん:クリスマスの夜は、サンタさんにプレゼントを用意していました。 ヨーロッパだとクッキーとミルクが多いと思いますが、僕の出身のマレーシアには中国の文化もあるからか、餃子とコーラをプレゼントしていたんです(笑)。少し大きくなるといたずらをするようになって、餃子に辛いものを入れたり、サンタさんを捕まえようとトラップを仕掛けてみたり。


ー餃子とコーラとは!新鮮ですね。

ネルソンさん:あとは、毎年オーストラリアにいる親戚の家でクリスマスを過ごしていました。でもオーストラリアも季節が反対だから、クリスマスは暑いんですよね。だから、僕のクリスマスの記憶はTシャツ姿なんです。キービジュアルに登場する子どもも、よく見るとTシャツを着て絵本を読んでいるんですよ。 この作品にはモデルがいて、左にいるのが親戚で、その隣にいるのが子どもの頃の自分です。あの頃はよく絵本を読みながら、クリスマスを待ち望んでいましたね。

 


ーどんな絵本を読んでいたんですか?

ネルソンさん:今でも印象に残っているのは『The Polar Express』(Chris van Allsburg, 1985)と『The Gingerbread Man』(Barbara McClintock, 1875)ですね。すごく大好きな2冊で、今回の作品にもジンジャーブレッドマンのモチーフを入れました。

『The Polar Express』は、雪のなかから列車がやってくるシーンがとても好きなんです。朝起きて、扉を開けると雪が降っている。その景色が寂しげで、切ないような。マレーシアやオーストラリアだと扉を開けても夏だから、太陽が明るくて眩しいんですよ。暑い国で過ごしてきたから、真っ白なウィンターワンダーランドのような、ホワイトクリスマスに対して憧れがあったんです。


ー東京でも雪が降ることはめったにないので、私もいまだにワクワクします。

ネルソンさん:東京でもホワイトクリスマスはあまりないですよね。そうは言っても12月もすごく寒いから、僕はそれだけでとても嬉しいんですよ。日が落ちるのも早くなって、「あー!ウィンターがやってきたなあ」と気分が上がります。


ー雪を初めて見たのはネルソンさんが大人になってからですか?

はい!日本に来てから初めて見ました。クリスマスに、白馬(長野県)にある友達の別荘に行ったときでした。朝起きたら、窓の外に雪が降っていて、思わず「雪〜!」と声をあげました。人生で初めてのホワイトクリスマスで、幼い頃の夢がやっと実現した瞬間でした。あと、その時期の白馬にはクリスマスを楽しむ家族がたくさんいて、子どもの頃に過ごしていたクリスマスの記憶と繋がって心が温まりました。

 


「心の中の子どもを連れてきて!」
 

ネルソンさん:白馬での思い出と比べると、東京のクリスマスは商業的な要素が強いと思います。イルミネーションももちろん綺麗ではあるんですが、「人とのつながり」よりもビジネスとしての側面を感じてしまって、私にとってのクリスマスとはちょっと違うなと思ったんです。だから今回は、自分が幼い頃からイメージしていたクリスマスへの期待感や、幸福感を伝えたくてデザインしました。


ー今準備を進めていくなかで、私も子どもの頃に家族と過ごしたクリスマスのことを、久しぶりに思い出しました。ネルソンさんは、今回のSpiral Xmas Marketをどんな方達に見ていただきたいですか?

ネルソンさん:社会人の方に特に見てほしいですね。社会に出ると、子どもっぽい考え方や気持ちは隠しながら生きていかないといけないので、窮屈だなと感じています。せめてこのクリスマスの間だけでも隠さずに、「子どもの自分」と一緒に遊んでもいいんだと思ってもらえたら。「心の中の子どもを連れてきて!」と伝えたいです。 もうひとつ、素直に思い浮かんだのは家族です。日本に住んでいないので実際にはなかなか難しいのですが、会場で実物を見てほしいですね。


ー来場される方にとっても、子どもの頃を思い出すきっかけになってくれたら嬉しいですよね。最後に、今回の見どころを教えてください。

ネルソンさん:会場に展示しているキービジュアルの原画や、装飾の細かいディティールまでじっくり見て、楽しんでほしいです。実は同じモチーフを違う場所にも使っていて、絵と絵のつながりを表現しています。

例えばキービジュアルに描かれた雪で遊んでいる子どもたちは、スパイラルマーケットのラッピングにも登場しています。その他にも、ジンジャーブレッドマンが他の小さな作品の中にも入っていたり。そういったリンクしている部分を探して、ストーリーを感じてもらえたら。子どもの世界観に入り込んで、絵本を読んでいるような気分で楽しんでほしいですね。

ーー 後編へつづく

 

■ Profile
ネルソン・ホー
1998年 ペナン・マレーシア生まれ、東京都在住。
2022年 多摩美術大学 日本画専攻 卒業。

古代人がメッセージを伝えたり、当時の事件を記録したりするために岩絵具を使って壁画を描いたように、メンタルヘルスやLGBTQへの差別など、現代の社会問題を記録するツールとして、岩絵具で絵を描いている。そして、キャンバスから展示空間全体へと物語を広げ、コンセプトやシリーズに応じて、刺繍、陶芸、映像、音声などを使い、観客がより絵画の世界観に入りやすくなるようなインスタレーションを制作している。

【主な経歴】
2022年 「Memory is a Garden」GALLERY ETHER(東京)
    「アートアワードトーキョー丸の内」審査員建畠晢賞(東京)
2023年 「FOCUS LONDON」Saatchi Gallery(ロンドン)
    「KYOBASHI ART WALL」優秀作品(東京)
    「SICF24」スパイラル(東京)
2024年 「ART TAIPEI」台北世貿一館(台北)
    「赤い空に飛んでいた赤い鳥」KYOBASHI ART ROOM(東京)

  
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