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Find Beautyは「美」をテーマにしたさまざまなカルチャーと、スパイラル美容フロアを紹介するフリーペーパーです。スパイラル館内や近隣のショップ、カフェなどで配布しています。
■Something Beautiful
- 美しいと感じるものやこと -
木村亜津
休日は山登りに行くことが楽しみのひとつです。友人と山行することが多いのですが、彼女と私では山での着眼点が違い、意見交換をしながら登ります。彼女は建築出身の作家なので、光や風、空間を捉えて会話します。私は植物の仕事をしているので、どちらかというと植物や岩の質感だったり、苔や木肌の色だったり、細部に心を奪われます。ふたりが美しいと思うことが、重なる部分と、重ならない部分と倍で楽しめるような気がしています。
美しさというものに私なりの答えを探している最中ですが、中でも心惹かれるものは変化だと思っています。
私自身の作品に、正円に切り取った花弁で画面を構成したものがあります。まずは花を乾燥させて押し花状にしてから切り取る工程に入るのですが、水気を取り除いた時点で、花脈がより明瞭に浮き出たり、色がまったく違うものになったり、乾燥してからでないと見ることができない質感が現れたりします。そして丸く切り抜く工程に入ると、花の輪郭を取り除いたことで花弁の見え方が変わり、私としては驚きの連続なのです。
春に制作する海藻の押し葉も魅力的です。大潮の日に海辺へ行き、海藻を拾い、作業場に戻って乾燥させます。海面からは目に見えない部分が多いので、目当ての海藻が生育している場所を調べたり、形や色を観察することで海の中のことを少しでも知ることができたり、また、シンプルに採取することの喜びがあります。乾燥して仕上がると、弾力があり分厚かった海藻がペラペラになって、薄く透けるような姿を見せてくれます。
昆虫たちの目には植物がどのように見えているのかという、私の長年の疑問をテーマに活動しているプロジェクトでも、さまざまな驚きがあります。植物は、紫外線をとらえることができる昆虫には見える、色や柄を持っていると言われています。紫外線をとらえて花を撮影してみると、満作が無数に煌めいて見えたり、水仙の花びらの端っこが蜜への誘導灯のように光っていたり、普段と違う花の表情にワクワクしました。
変化とは、そのものの色やかたちが変わるというだけでなく、捉え方や視点が変わることでもあり、変わるからこその美しさは、私に驚きと感動を与えてくれます。
木村亜津 Azu Kimura
フラワーデザイナー/作家
植物を素材とした空間ディスプレイや、撮影を担当する傍ら、自然物をテーマに作品を制作。植物という存在が鑑賞者にとって新鮮なものになることを目的に活動している。
http://azukimura.com
■Beauty in the Film
濱田明日香
ロンドンでファッションを学んでいたときに、ファッションとは美の表現だと教えられ、美しいものばかりがファッションじゃないと思った私は、じゃあ例えば「ゴシックファッションは?」と先生に聞いたところ “Beauty of Death” (死の美しさ)という答えが返ってきた。なるほど、自分が「美しい」という言葉に勝手に制限を設けていたことに気付かされる。つまりその人が美しいと思って身につけているものが美であり、ファッションであるということ。
映画の世界でも美しい風景、色、友情などなど、理解しやすい美しさもあるけど、恐怖、グロテスクなもの、エロティシズム、執着や嫉妬とともにある美しさもテーマとして多く表現されてきたように思う。そんな視点で印象深く記憶に残っている映画3本を選んでみた。どれも「美しい」というお題で万人に理解される映画ではないとは思うけれど、振り切ったレベルの、なかば狂気じみた美しさを貫き通している監督たちがすばらしい。
1. 『アスパラガス』
監督:スーザン・ピット/1978/アメリカ/16分
何を見せられているのかわからなくなる、狂気に満ちたアニメーション。アナログな動きに不気味さとかわいさとエロさが混在する独特の世界観。ずっと眺めていられる、動くコラージュ。
2. 『オテサーネク』
監督:ヤン・シュヴァンクマイエル/2000/チェコ/132分
子供のいない夫婦が切り株を子供として育てる物語。実写とアニメーションが混ざった独特な手法で人間の闇や癖を描いていく。グロテスクで美しい、不思議なバランス。妊娠偽装のために妻が作った妊娠クッションがかわいい。
3. 『シャイニング』
監督:スタンリー・キューブリック/1980/アメリカ/143分
冬のあいだ閉鎖されるホテルの管理を任された一家が狂い始める名作ホラームービー。徐々に一家を精神的に追い詰めていく展開もすばらしいけど、すべてのシーンをキャプチャで残しておきたいくらい、衣装や背景などの絵作りまでが完璧と思う映画。ホラーが苦手でも、指の隙間からでも見てほしい。
濱田明日香 Asuka Hamada
ファッションデザイナー
ベルリンのファッションブランド“THERIACA”(テリアカ)のデザイナー。ファッションとパターンについて研究し、自由な発想の服作りを続けている。ギャラリー、美術館、ショップ、舞台、本など、色々なメディアで作品を発表し、服の面白さを伝えている。著書に「かたちの服」「大きな服を着る、小さな服を着る」「ピースワークの服」「甘い服」(文化出版局)、「THERIACA 服のかたち / 体のかたち」(torch press) がある。
2019年6月7日~25日まで KIITO(神戸)にて個展「THERIACA 服のかたち/ 体のかたち」開催。2019年7月4日~15日までKAAT(神奈川芸術劇場)で行われる舞台「ビビを見た!」の衣装も担当。
■Beauty in the Music
松浦摩耶
ちょうど一年前。日本のじめじめした梅雨を抜け出すように、初夏の北欧を訪れた。「狭くてよければ、ぜひ泊まってね」そう言ってくれたのは、ちょっと年の離れた友人で、テキスタイルデザイナーのKarinさん。おばあちゃんというには若すぎるけど、きれいな白髪で少女みたいに笑う彼女は、私がこうやって年を重ねたいと思う人のひとりだ。彼女のアトリエは、コペンハーゲンの中心地から電車で30分ほどの静かな湖のほとりにある。
「海へいくよ」そんな声で目を覚ますと、アトリエの前に自転車が置かれていた。ペダルに足がやっと届くくらいの大きな自転車にまたがり、見失わないよう必死に彼女のあとをついていく。深い森を抜けると、遠くに真っ青な海がみえてきた。気づけば、さっきまでふらついていた私の運転もなかなか安定してきている。海に着くなり、彼女はすっぽんぽんになって水へ飛び込んだ。泳げない私は、朝陽でキラキラ輝く水面に足先をつけるだけ。
その日の夕方、私はひとり同じ海へ向かった。道はなんとなく覚えていた。夏の北欧はいつまでも明るい。空は見たことのない色をしていた。
そんな美しい北欧の夏を集めた、ミッドサマーのプレイリスト。
松浦摩耶 Maya Matsuura
フォトグラファー / 編集者
1993年千葉県生まれ。大学在学中にフォトグラファーとして活動をはじめ、出版社を経て、現在は写真と編集を中心に雑誌・WEB・広告など様々な分野で活動。インスタグラムでの出会いをきっかけに北欧に興味を持ち、今では毎年訪れるほど。@mayanoue
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