JA EN

【sms Interview】vol.002 SŌK ERICA SUZUKI CERAMICS

記事掲載日:2018.03.24

生活に携わる分野のものづくりをしている、作家・クリエイターの視点から、暮らしのかたちを考えるspiral market selection Interview。
第2回は、陶の器や装身具を制作しているSŌK ERICA SUZUKI CERAMICS 鈴木絵里加さんにお話を伺いました。

──東京を拠点に活動する

岐阜の多治見市陶磁器意匠研究所を修了する頃、東京で陶芸ができるいい物件が見つかったので、そのタイミングで東京に戻りました。関東出身なので、生まれ育った場所はやはり快適なので、いずれは戻る予定でしたが、はじめから東京に工房を構えることは考えていなくて。物件ありきだったのですが、いまは東京で作家活動をスタートさせて良かったと思っています。
焼物の産地など、陶芸をしている人が集まる場所で活動する良さはもちろんあると思うけれど、逆に近すぎると意識してしまうこともあるので、周りに陶芸をやっている人が少ない環境の方がマイペースな私の性格には合っていると思っています。

──ハンス・コパーとの出会い

大学では建築を専攻していました。高校で美術のコースを選んで、漠然と美大に行くとは決めていて。もともとグラフィックを志望していたのですが、グラフィック志望の子たちは本当にデッサンが上手いんですよね。私のいたコースでは浪人が禁止されていたので、あぁ、これは受験までに間に合わないなと。そんな時に建築系の課題をする機会があって、初めて前のめりに課題と向き合えたんです。描く技術だけでなく、構成していく力、組み立てていくことが必要とされていて、絵を描くこととは違う視点が面白かったのだと思います。

大学を卒業して設計事務所でアルバイトをしながら、今後どうやって生きていこうか考える日々が2年くらいありました。でも、仕事として建築に向かう中で、自分の手だけで物を生み出したいという気持ちが大きくなっていったんです。そんな時、駅で偶然目に留まったハンス・コパー(Hans Coper / 1920-1981)の展覧会に行きました。衝撃でした。いままでの陶芸のイメージを逸脱しているというか──陶芸って、私はもっと生活に寄っているものだと思っていたんです。でも、ハンス・コパーの作品は完全にアートだったし、言われなければ焼物だって分からない。昔からずっとあったかのような造形の魅力があって。彼は外壁のタイルのデザインも手掛けていたり、建築的な感覚もある人で。直感で「建築やめて陶芸やろう」と思ったんです。こっちの方が自分が求めている方向に近いな、みたいな。

いま思えば、何者でもなかったから決断できたのかもしれません。設計事務所ではいろいろな経験をさせていただきましたが、一方で大学院を受験したり、ギリギリまでぶらぶらの状態で。あの時、ハンス・コパーを観ていなかったら、いま何をしていたのかな。

──陶芸との距離

陶芸をはじめた経緯もそういうことだったので、いまも焼物の歴史や特徴には全然詳しくないんです。知らない方が自由に発想できることもあると思うので、その都度、興味があることを勉強する感じです。建築と陶芸は似ていて、使うもの──器とか家という何らかの機能を持ちつつも、つくる人によって差が出るところが、完全なアーティストというよりは、ある程度の制約のなかでどう自分を出すかという方が私には向いているのかもしれません。後から思えばですけれど。

私は飽きっぽい性格で、ずっと続けるということが苦手なんです。でも、焼物は不確定要素が多いので、いい意味でも悪い意味でも、それがあるから飽きずに楽しめる部分がありますね。全部自分でやっても、最後は窯に委ねるところがあって、全てをコントロールはできないですね。それが辛さでもあるし、面白さでもあって──最後の最後に自分の手を離れて戻ってくるというのがいいですね。陶芸を死ぬまで続けられたとしても、完全に思いのままにつくり上げる事はできないのだろうなって思います。

私のつくっている釉薬は、同じ窯に入れても上の段と下の段でまるで違う焼き上がりになるものが多いんです。施釉するときは、窯にどう詰めるかイメージしながら釉掛けしてます。でも施釉はあまり神経質にやり過ぎると焼き上がりの表情がつまらなくなってしまうので、あくまでも感覚的に、その時の偶然性を楽しむようにしています。釉薬の調合は厳密に計っていますが、窯の焼成記録は取らず、焼成時間は窯のコンディションと詰める量に合わせて感覚で変えていく感じです。思い通りにいく時もいかない時も、必ず何か発見というか、学びがあって、それが陶芸の面白さかなと思います。

──かたちがない所で生まれた

かたちがない所で生まれ育ちました。
港町で。漁港があって、ずーっと水平線が見えているんです。町なのだけど、自然物よりも海・水平線というイメージで。すーっと、したところが心地よく育ったのかもしれません。
だから、装飾的だったり有機的な形状の作品はあまりなくて、あってもフジツボみたいなものとか。そういう点では、森を見て育った人とは感覚が違うのかもしれないですね。

私は何かからインスピレーションを受けるというよりも、ずっと蓄積されてきた好きな色などが基本で、こういう色を作りたい、と思って作るよりは、いっぱい試してみて、そのなかで好きな色を残していく感じです。足すより引いていく感覚ですね。それに、かたちをつくるぞって感じで作っていないですね。建築をやっていた事も影響しているのかもしれません。
​​​​​​​

インタビュー・編集/スパイラル

■ Profile
SŌK ERICA SUZUKI CERAMICS
鈴木絵里加

1985年千葉県生まれ
2008年日本大学芸術学部デザイン学科建築コース卒業
2014年多治見市陶磁器意匠研究所修了

「曇りの日に似合う」をコンセプトに、陶の器や装身具を制作。
原始的なイメージを持ちながらも、現代の暮らしに静かに溶け込むような作品を目指している。
http://www.soak-tokyo.com
Instagram ID: svzvkierlca89
■ 開催概要
spiral market selection vol.383 SŌK / ERICA SUZUKI CERAMICS 1st EXHIBITION
会期:2018年3月2日(金)〜3月15日(木)
会場:Spiral Market
■ spiral market selection
生活に携わる分野のものづくりをしている、作家・クリエイターの作品を日々の生活を提案するライフスタイルショップでご紹介することで、作品をもっと身近に毎日の生活に取り入れていただきたい、というスタッフの想いから1995年にスタートした、Spiral Marketの企画展。

RELATED TOPICS

〒107-0062 東京都港区南青山5-6-23 MAP
03-3498-1171
SPIRAL ONLINE STORE
SICFspiral scholeFooterBanners--sal.png
 
象の鼻テラスSLOW LABEL  spinner_logo_footer.png