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生活に携わる分野のものづくりをしている、作家・クリエイターの視点から、暮らしのかたちを考えるspiral market selection Interview。
第15回は一点ずつ手編みで制作したファッションアイテムなどを発表しているhariknitting(ハリニッティング)さんにお話を伺いました。
──ちゃんとやっていれば、きっと誰かが協力してくれる、見ていてくれる。
hariknittingは2014年にスタートしたので、今年で5年目になりました。美容専門学校卒業後、飲食やイベントの仕事をしていく中で、当時、小さいときから好きだった編み物でヘアバンドを作ったら、友達が欲しいと言ってくれたんです。その子はシンガポールで働いていたのですが、自分のお店での展示に誘ってくれて、軽い気持ちでやってみたことが始まりでした。
嬉しいことに作品に対する反応もあって、やってみようかな、って思ったんです。それからは、流れに身を任せて──展示やグループ展に誘われたら極力参加をするようにしていたら、いまに至った感じです。ブランドをやろうと思って始めたというより、いろいろな縁でここまできました。私は新しい環境や挑戦にも躊躇せずに飛び込んで行くタイプなんです。ちゃんとやっていれば、きっと誰かが協力してくれる、みていてくれる、って思っていて──そう信じてやっていたら、現実になるんだなって。
hariknittingの活動が自分にはすごく合っているんだなって思います。それに、このブランドがいい出会いを運んでくれて、そこから広がっていくご縁があるので、やっていてよかったな、って思っています。
──身につけるものをトータルでつくっていきたい
ピアスやヘアバンドなど、アクセサリーは編み調子が人によって違うので、すべて自分でやっています。淡々とした地味な作業なので、仕事中は映画を流しながら作業しています。邦画・洋画は問わず、BGMのような感じですね。
編み物は気持ちの調子がすごく出るので、気持ちがのらないときには編みません。アクセサリーは力を込めてきっちりと編んでいくのでそこまで現れないのですが、バックやヘアバンドなどは気分が出ているのがすごく分かるんです。気持ちが高揚している方がテンポよくすいすい編めますね。
ワンピースやロングスカートなどの洋服も型紙を起こすところから始めます。本で調べたり詳しい人に聞いたり、あとは気になったデザインを隅々まで見て、勉強しています。ワンピースが好きなのですが、長身の私にはなかなか合うものがなくて──だから、hariknittingの洋服は長身の女子でも、縦のラインが綺麗に見えるようにしています。これからも身につけるものをトータルでつくっていきたいと思っています。
──気持ちが柔軟になった旅
ものづくりについて悩む時期が続いていたのですが、今年、旅行で訪れたメキシコでの体験が考え方を変えてくれました。メキシコに暮らす人たちの、ものづくりに対する考え方とか、色彩感覚が素晴らしかったですね。カラフルな服の色の組み合わせ方とか、観るもの全てが勉強になりました。また、日常にものづくりが定着していて。市場に行っても、当たり前のように傍らで何かをつくりながら、商品を売っているんですね。
そして、暮らす人たちから、とてもハッピーなエネルギーを感じました。食事を楽しみながら、お酒を飲んで、気分がのってきたら踊って──心の底から生活を楽しんでいる感じがとても心地よくて。その様子を見たり、自分も輪に入れてもらったことで、初心に戻れたというか──いま、自分のできることをやっていけば良いのではないか、と思ったんです。メキシコに行って、頑張ろうって思いました。
帰国してからつくった新作も反応が良くて。やっぱり、思ったものをさらっとつくってみて良いんだなって、ものづくりへの気持ちが柔軟になりました。
──そのときつくりたいもの、着たいものをつくり続けたい。
ものづくりは全て独学で、必要な技術はその度に人に聞いたり、調べています。編むうちに、手は慣れていくので、少しずつ技術も広がっていきます。私の仕事には資格のようなものは無いけれど、続けていくことで無限に広がる世界があるのは面白いですね。
私は、アーティストではなくて、どちらかと言ったら職人に近いですね。でも、アーティストとも職人とも言えない、どっち付かずの感じがあるんですね。以前は、自分は何をしているんだろう?って、ジャンルや肩書が明確でないことへの葛藤はあったのですが、一言では把握しにくい部分もあるけれど、そのときつくりたいもの、着たいものをつくっていけば良いんじゃないかな、って。それを続けて定番にしていったら良いのかもしれませんね。いまは「hariknitting」をやっている。それでいいかな、って思っているんです。
インタビュー&編集/スパイラル