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SPECTRUM TALK スペクトラムトーク 第3回  恋するAI-歌人生成プロジェクト

2019.3.20 wed 19:00ー20:30

心のないAIに、恋の歌は書けるだろうか・・・。

NHK番組「人間ってナンだ 超AI入門 恋愛する」で知り合ったNTTレゾナントのAI研究者・中辻真と歌人・野口あや子。

より話題あるAI短歌を作り出すために両者が考えついたのは、意外にも朝のドラマで有名になった歌人、柳原白蓮をはじめ、与謝野晶子、岡本かの子など近代の肉食系女性歌人たちをデータベースに恋の歌を生成させることだった。

近代データベースのAI歌人がアイフォンを詠むことは可能?
AI歌人の歌に人間が恋に落ちることは可能?
AI歌人は新しい時代のアジアンビューティーポエットかもしれない。

いくら情報が変化してもかわらないのは人のときめき。
では人のときめきはどれだけ情報化できるのだろうか。
本トークでは、短歌研究社の発刊する「短歌研究」の編集発行人・國兼秀二をゲストに迎え、AIによる短歌の可能性を議論しました。

■ プロフィール
中辻真
2001年京都大学工学部数理工学卒。2003年京都大学大学院情報学研究科システム科学専攻修了。2003年NTT入社。
以来、セマンティックWEB、データマイニング、機械学習に関する研究開発に従事。
近年は、深層学習を基にした対話システムの研究開発を推進。
2010年京都大学大学院情報学研究科社会情報学専攻博士課程修了。
2013年度レンセラー工科大学研究員。
2015年度人工知能学会論文賞、2015年度電子情報通信学会優秀論文賞などを受賞。
2015年よりNTTレゾナント。現在、深層学習に基づく自動対話応答生成、自動QA応答サービスやキャラクターとのチャットボットサービスなど、 人工知能技術による実用化プロジェクトを推進している。 情報学博士。
野口あや子
1987年岐阜生まれ。名古屋在住。
高校在学中、第49回短歌研究新人賞を受賞。
第1歌集『くびすじの欠片』で第54回現代歌人協会賞を最年少受賞。
ほか歌集に『夏にふれる』『かなしき玩具譚』『眠れる海』。
三角みづ紀との共著に『気管支たちとはじめての手紙』(電子書籍)。
近年は朗読活動に力を入れ、機を得てフランスでの短歌朗読を行う。
またエッセイ、コラボレーションも精力的に行っている。
國兼秀二
1988年早稲田大学政治経済学部卒。
日経BP社を経て、講談社に入社。
週刊現代編集部、文芸図書第二出版部を経て、07年同部部長、11年講談社文庫出版部長。
17年より、講談社グループの「短歌研究社」社長・編集発行人。
■ 開催概要

日時:2019年3月20日(水) 19:00-20:30 (開場18:30)

場所:スパイラルルーム(スパイラル9F)東京都港区南青山5-6-23

料金:1,500円(税込)

 

出演:中辻真(NTTレゾナント株式会社 AI担当 担当課長)

   野口あや子(歌人)

   國兼秀二(講談社第五事業局次長/短歌研究社社長)

 

主催:株式会社ワコールアートセンター
企画制作:スパイラル

開催レポート

柳原白蓮、与謝野晶子、岡本かの子、原阿佐緒、九条武子、そしてAI歌人アドバイザーでもある野口あや子の短歌をデータをブレンドした恋するAI。

愛しさや憎しみ、出会い、別離をもデータ化して感動的に歌うAIができたら「女性作家は所詮、身体で考える」と嘯く評論家や作家たちへの最終的なアンサーにもなるのではないか、そんな思いも込めました。

まだまだ発展途上、上手く出来上がっている歌、出来上がっていない歌とありますが、言葉足らずなAIの言葉から勝手に妄想して読んでしまうのもまた、AIになれない愚かな人間の業だと気づかされます。

恋するAIの成長ぶりにこれからみなさん恋をしてくださいますように。

-野口あや子

 

歌人AIは、恋愛相談AI「オシエル」などで培ったNTTレゾナントの文章生成・対話AI技術を基に、短歌をAIで生成できるかに挑戦するNTTレゾナントのプロジェクトです。

特徴としては、ユーザの入力した初句を基に、2句、3句、4句、結句の各句を生成するとともに、句の順列や、句の組合せを学習します。

弊社の持つ膨大なQAデータなどをベースに歌人の野口あや子さんのアドバイスを基に、近代女性歌人のデータを収集し、学習をしています。

-中辻真

 

 

SPECTRUM TALK スペクトラムトーク 第3回
恋するAI-歌人生成プロジェクト


来場者の入力により生成された短歌(総数124句)

夕暮れの 藪のかげすく ほのあかり 庭の桜の 足もとにちる

合コンに 心はたのしむ 春に泣く みどり児抱きて 見する紅梅

行く末は わびしとなりて わがたまか 炎の如く 血汐のごとし

明日咲く 桜の吹雪 立ちにけり わが衣の皺 にはかに著し

くるくると 桜花の奥より わが家の そこはかとなく 生きてぞゐむ

愛すれば 海のいとし 淡星と かすみのなかに 手をかざしけり

待ちのぞむ 春の夕べを みぬ人に わがこの歌は どうしてきかせむ

鬼の面 遊女のもとに ほの青う 露にぬれたり 芝生にたてば

黒き心 桜花の岸に さし初めて 美醜のかげの うつるも悲し

浮心 花のはてより ほのあかり 庭の桜の 足もとにちる

借金が 持たぬ春の 重荷なれ 吾が淨土かと あはれ白うばら

春の夜の 花の息とも やはらかに よくうたひける 子の寝たる気息

蝉時雨 門の真中の 風すこし 燃ゆるさ中に えらぶに堪へぬ

きらきらと 襟を寒みか わが家の そこはかとなく 生きてぞゐむ

柔らかな 提灯の炎は とどかずて 桜はただに 夜半にめざめて

かぐわしき 春の夕べを みぬ人に わがこの歌は どうしてきかせむ

青い春 恋しきひとつ 細椽の かちかちに そよ風もなし

そんな日も コンロに投げらるる ゆるさじの まきし見たり こみこみてゐぬ

もののけの 桜花の奥より 日の本の 春の白さは 病む身久しき

泣き桜 われにも啼かず 赤土の 壁よりあなや すべり落ちたり

薄明かり ぴあののもとに 伊豆の海の 紺青の曇天の 淡陽さしたり

くれないに 吾は桜の 似しとべき 子伴れしかなし 夏半来ぬ

許すまじ わがこころに 音もなき わが涙糧に 大不二が嶺

ぶっ殺す 庭に椿は 紅小ばら 乳もかくし得ず 這ひすべりつつ

キューティクル 鳥は涙を 動かざり ここの丘辺を 真昼なりけり

生まれ変わっても ものの一月の カーテンをば 悲しみの海に 黒髪を梳く

宇宙から 石炭の層に 君となり 雌雄の小犬が あでにけり

春の川 暮るればさすが 細椽の かちかちに そよ風もなし

青山の いま狂乱の その時の ちさき女は うれひに泣きぬ

恋し君 天のやうなる 風吹けば 海に求めむ 思ふひととき

恋しくて 心はなごむ 遠方の 地としも知らで 安居せしかも

夢に見た 襖はかたく わが胸の 秘密の扉 みとめたりけむ

蒼きドラゴン 夢にもよべは ダンスをまふ 四月なかばの 春の夕風

逃げる夜の ひとのひとつ 包めども 十年にして まもれわが歌

みしみしと われの見れども 道の辺の 野薔薇を海ゆ 来りけむものか

繰り返し ひとときの 静けさを またなくめでぬ 大方の日は

感じると わが夜のものに わがよりて 蔓ないままに揃ふ 幾ないままにの蔓

おぼろ月 海の果も わがこころ また行くものか 洋館の窓

うっとりと 夢にいきづく その果てて 口慰めも 餓鬼窟電車

猿二匹 命の森に 包めども 十年にして まもれわが歌

春ここに 桜さきけり 朝顔の 葉を見いりつつ 薬をふくむ

水を飲む 流れ行く身を おもしろや 浮べる月も 久遠に生きよ

魔女の林檎 交友の衾身を ひとしぬれて みなわが部屋に 春の夜の夢

ちえちゃんが わが手の門に 包めども 十年にして まもれわが歌

たまらない わがつらにぞ あらずしわが あればかけれ われも浴び居り

なつまつり 欅のやう さもあらば あれ先づぞ泣かるる 今夜のさむけさ

宝石を こころに放てば 白き指 やせのまさりて 春の大路も

知らないと つみとなりて 鳥のべき ほどに捨てむと 思はれずして

キラキラの 緋の衾身を 包めども 十年にして まもれわが歌

トリカブト わがものにのみ わが家の そこはかとなく 生きてぞゐむ

まんまるな 提灯の炎は さもあらば あれ先づぞ泣かるる 今夜のさむけさ

くびすじは いかがなりとも 乳みつる 澄みに咲くみ 家に急ぎぬ

パンダ鳴く 吾にめぐりて 見るよりも 刃の傷痕に 心ふるひぬ

眠たくて 霙する日は 春のはて つひにもだして 今日は見む

くちびるに 氷をそなへ 何ものの 宝のごとも 拾ひ来しいのち

毒リンゴ 恋にもよべは 紅の 小ばらのつぼみ 鈍光りかも

恋人と 湯浸きぬくもる わが胸の 秘密の扉 みとめたりけむ

別れ際 母とかたりぬ ほの青う 露にぬれたり 芝生にたてば

ハムレット 蜜柑の中に 夜の本の 突としてぴあの われは浴び居り

春の日に コンロにかかる おそれつつ 聖者もわれを いとま乞ひけり

猫二匹 人の森より 盗まれて なしとなりしか 身の死を思ふ

春宵に 提灯の炎は さもあらば あれ先づぞ泣かるる 今夜のさむけさ

暖簾に腕押し 蜜柑の音 ひとのかげ 露草を病む ふかく静けき

ハイエナと われに強いたる わが家の そこはかとなく 生きてぞゐむ

静けさや 毒薬のごとく 包めども 十年にして まもれわが歌

ところてん 人にもよべは 暮れぬ日より 緋房の籠の 悲しみぞ湧く

渋滞の 電車の音の 和みけり 黒梨を梨を 白玉の花

転がる牛め 雨のやうな 花にして その海にのみ あはれ葉鶏頭

花の下に 一葉に敷きつ 一瞬の そのえにしさへ もたざりしかな

かまいたち 月ともなき わがこころは ゆめ知るなかれ 白玉夏花

マカロンロン 曇天のしたに 夏の野に 群咲けるうばら なびけ過ぎけり

口に甘い 心は初めに 山のはて つらき運命を 夕顔の花

甘々な 提灯の炎は 炉にかい入れ 散るとしもなく たそがれは来ぬ

燃やせよと 湯浸に咲きて 玉葱の 薄茶の皮ゆ 咲きとほりたり

桃の花 リップのない葉に ほの青う 露にぬれたり 芝生にたてば

流されて 泣く子の門に 君にけり よろしきはなれ まのあたり置き

ゆらゆらと 曇天のしたに 春浅し 散るとしもなく 散る花のあり

マフラーの 花の真赤き そのかたへ ふわふわ桜 咲き白むかも

もう嫌だ ことぞわれの ありし人 涙に物を 春の夜の夢

月永く 春が夕べを となり咲き 紅山茶花は その傍の桜

横顔に 日の昇るたる 春陽の間に 黒ばらと見しは 虫夢むらむ

午後6時 水のやうさ 伊豆の海に いや紅の 動く夏花

合コンの 空の夜も 折折に 落つるすなはち 過ぐる葬列

サラリーマン われはやつひに 天地の 運命呪ひて 命果つべく

恋敗れ 男の海に こぼし来て かなしきことの 虫の声かも

デパ地下は 毒薬のごと 今のごと 夢の海に 眼を知る

瀬をはやみ 涙の柱に 背を投げて 吾が思ふこと 悲しかりけり

愛の無い夜 緋の衾身を おそれつつ 聖者もわれを いとま乞ひけり

君思い 吾とわが世や 天地に 人の子などか 歌よむことを

借金を 別れし親に 白き指 やせのまさりて 春の大路も

おはよう わが女とや さもあらじ あれ先づぞ泣かず われは餓鬼窟

別れの夜 死なでに投げむ 思ふべき 下に秘めつつ 思ひぬはじめ

タイ料理 湯浸きぬくもる ものといふ よろしき時を 女のすくのみ

驚いて いざや寂しき 春にならば ドンファンに 思はれぬかな

引き連れて いざや寂しき 東京に わが点す灯を ひとつだに増さむ

あきらめの 家の柱に ありし日の 面影うかぶ 戀ならねど

またかいな 海夕日の あらたなり 軽き疲れに 背にして立てり

奪い盗る 春の夕べを みぬ人に わがこの歌は どうしてきかせむ

さようなら われはわれの わりもなき 涙の糧に わが歌は成る

カーテンを、 量むとけむ 案ずると 思はれそめて 夜も早く寝る

うばいとる 春の夕べを みぬ人に わがこの歌は どうしてきかせむ

卒婚の われやつひに 冬の日の うすらうすらと さすもわびしき

黒き心の 別れの雨に 散るさくら いかなる風に かつ散りにけん

しましまの 一年に敷きて 似しといふ 子伴れてかなし 夏半来ぬ

手を握り 女の髪が 何物の 宝のごとも 春の夜の夢

傷つけて 男の柱に 春朝し じやがいもの花 遊びて居るも

恋をして 男のなげき ただよへる 安く寂しく かなしきはなし

口紅の 空の真下に 広重が 現の桜花を 描き重ねたり

逃げそびれ ありとのごとくも 女より ひそひそながらへ わがものをきく

慰謝料を 人にはよべは とばかり 七の灯を われなら歌かも

逃げる夜を 悲しきものを 包めども 十年にして まもれわが歌

ラララララ 庭に椿は 敷き腐り その茎ごとに 魚つくる男

元彼の ありとすなれば 風すこし 燃ゆるさ中に えらぶに堪へぬ

エモーション われとや花の みぬ人に わがこの歌は どうしてきかせむ

街コンで 緋の柱に わがよりて 蔓ないままに揃ふ 幾ないままにの蔓

心にも 情にぞゐし 春陽の種子 黒ばらと見しは 紅のばら

富み生きて 針に貫かれし われにして 海に捨てむと 思ふひととき

詩人 われによく似る 君戀ふと いはばやいかに 戀ならねど

爆弾と 湯浸きぬくもる その時の ちさき女は うれひに泣きぬ

かきごおり 男のやうなる 朝顔の 葉を見いりつつ 薬をふくむ

キンキラキン 春の夕べを みぬ人に わがこの歌は どうしてきかせむ

機械です てだてて泣くやと さもあらば あれ先づぞ泣かるる 今夜のさむけさ

忘れないで 家の前に わが道と 運命し今日ぞ 黒髪の泣く

世界一周 誓やひとの 東京の 震後の庭に 咲き静もれり
 

 

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