秋から始まった新企画、CREATOR’S INTERVIEW。
普段は知れない作家の想いを届けます。
記念すべき第1回目のゲストは、
普段から親交のあるFillyjonk(フィリフヨンカ)さんです。
前編では、ご好評のうちに閉幕した
「Fillyjonk -60SEEDSから60FLOWERS 」のお話をお伺いしました。
そして、お客様との対話の機会であるFillyjonk Awardも無事に終了。
後編では、お客様の手に渡ったそれぞれの花々が、 どう花ひらいたのか紐解いていきます。
コツコツと積み重ねること
ーものを作る上でどのようなことを大切にしていますか?
平岩さん:「クラフトマンシップ」を大切にしています。コツコツ作ったものって「なにか」が宿っていると思っているので、それをお客さまに感じてもらえたらいいなと。手にとった時に「なにか気になるな」「なにか素敵だな」と思っていただける直感的な魅力というか。ものづくりをする上で、そういう「なにか」を宿すように意識しています。
来年2025年で15周年を迎えるのですが、今まで努力してきた時間も相まって、コツコツと積み重ねてきた今だからこそ伝えることができる表現かと思います。
平岩さん:今回の展示では、その「コツコツ」というクラフトマンシップを表現しようと、動画を作りました。タイトルは『SEED»»FLOWER』。2020年の60SEEDSの投票で大賞をとった「ホウセンカ」が、種から成長し、お花が咲き、という過程を写した動画です。
コマ撮りなので1個ずつパーツを動かして。撮影には丸1日。パーツ作りには何日かかったのか…覚えていられない程の時間がかかりました。
「コツコツと一歩ずつやっていけばいつかはたどりつく」というFillyjonkらしい作品ができたと思います。動画の中で、まいた種は花となり、そしてまた種をまいて…と繰り返していくのです。
実は裏テーマもあるんです。ただ繰り返すだけではなく、全ての種が必ず咲くとは限らない。「一時期頑張れなかった人もまた種をまけばいいよ、また頑張れば花が咲くよ」ということを伝えたかったんです。
「思いを馳せるアクセサリー」
平岩さん:作品はひとつひとつこだわりを持って製作しています。芸術家・建築家のフリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサーの「自然の中に唯一存在しないものが直線である。」という考え方がとても好きなんです。私たちも彼のように、直線ではなく、曲線で作品を作りたいと思っています。
ー植物って確かに直線ではないですよね。
平岩さん:そうなんです。花びらも1枚1枚違うかたちをしています。しおれているのがいたり、虫食いにあって歪んでいるものがいたり。そこもかわいい。そういう部分を大切に表現しています。日本のものづくりって、均一に、綺麗に作る傾向があると思っていて。もちろんそれが良いところでもあるんですが、量産する際に職人さんとのやりとりで苦労する時もありますね。
ーフィリフヨンカのアクセサリーならでは特徴はありますか?
平岩さん:私たちの作品は、「愛でるアクセサリー」なんです。他者に見せて飾るだけではなくて、撫でたくなるような、自分が見てほっこりするものだと思っています。「思いを馳せる」というのもその要素の一つで、異世界に思いを馳せたり、過去を懐かしんだり、小さな発見があったり、自然を敬ったり…。お客様が自分と対話をするようにと、願いを込めて作っています。「身につける方の内面に迫るようなアクセサリー」がキーワードです。
ー自分を綺麗に見せる、着飾るようなアクセサリーではないということですね。
平岩さん:そうです。もちろん身につけるものだから綺麗に見せる要素もあるのですが、そこが一番の目的ではないんです。私たちのブランドでは、「癖のある石」をご紹介しています。宝石を扱ってはいるけれど、宝石の美しさや金銭的な価値を求めるだけではなく、鉱物としての魅力である「ちょっとした癖」にも愛着を持って欲しい。そういう「ちょっと違う要素」も大事にしていますね。
ー先ほどお話していた「虫に食われた植物の葉っぱ」との共通点を感じますね。ある意味で「完璧」ではないような…。
平岩さん:そうですね、そう、「癖」も「味」なんですよ ◎
石の「その子」にしか出せないところがとても好きですね。自然が作り出した唯一無二な美しさがそこに在ります。
クラック※が入ったおかげで虹が出るとか、内包物の見え方が一般的なものと違うとか。「癖」から空想を広げられる。それが「Fillyjonkっぽさ」なんです。
ージュエリー以外にも、アソートの紙箱にもこだわりがあるように感じたのですが、
テーマなどはあるのでしょうか?
平岩さん:世界中の紙を集めている紙屋さんが愛知県にあって、そこから紙や箱を仕入れています。植物柄や建物柄もあるんですよ。BOXを集めているお客さまも結構いて、その方々が選べるように毎回なるべく新しいものを仕入れたり、色の組み合わせだけでも変えたりしています。またオリジナルの紙柄もあるので、どの柄か探してみて欲しいです!
ージュエリーをこの紙箱に入れて、保管しておきたくなりますね。
平岩さん:嬉しいですね。お客様によっては箱によって用途を決めている方もいらっしゃって。だから、日常使いしていただくことも考えて引き出しにも入る薄いかたちに設計しているんです。自分に買ったご褒美、プレゼントのように演出したくて、リボンがついたこの形にしています。
ブランドを継続していく上で大切にしていること。
ー2人で作業する上で違いや分担などはありますか?
平岩さん:兼森は構築的なタイプで、平岩は直感的なタイプです。作り方も結構違います。兼森はきっちり細部まで考えてから形にしていき、私はなんとなく見えてきたら手を動かして、細部に行き詰まったら、そこから工夫していきます。
お互いに途中で行き詰まったら入れ替わり進めるというやり方をしていますね。兼森がコンセプトを考えすぎて動き出せなくなっていたら、平岩の出番だし、平岩が作り出した作品の細部を兼森が再構築していったり。1つのものづくりを2人の手で混ぜ合わせることで良い発展ができています。
コンセプトを話し合っていて良い感じにぽんぽーんっと飛躍していける瞬間が、最高に楽しい時ですね!兼森がおうちのシリーズを、平岩がお花のシリーズを作っていると思われる事が多いのですが、実は2人とも両方作っています。デザインをする上で分担がないのは珍しいのかもしれません。
ースタッフさんとの関わりの中で大切にしていることや行っていることはありますか?
平岩さん:Fillyjonkのものづくりの一員(一部)になってほしいと思っています。仕事場は全ての業務がわかるようにしていて、みんな販売から製作まで携わっています。そのために、私たちの考えを理解したり、知識を深めたりするゼミを定期的に行っています。また、自分が仕事上で気になったことや不明点・やりたいことをリストにして共有しています。
ゼミは基本的には彫金や天然石を取り上げていますが、この間「みんなの好きなものを知ろう」というテーマで実施したんです。その時に思ったのが、「みんな好きなものだとめっちゃしゃべるじゃん!」と。
社員ひとりひとり強いこだわりがあったので面白かったですね。ジャンルは問わず話していたのですが、聞いていたら結構同じものが好きだったり。その中でもやっぱり個性が出ますしね。
ースタッフさんもデザインを担当されることはあるのでしょうか?
平岩さん:なるべく参加してもらいたいと思って一緒に仕事をしています。ささいなことでも、「どう思う?」と投げかけています。私たち2人が「こうしたい」と思っていることに対して、みんな頑張ってついてきてくれます。
でも、私たちについてくるだけじゃなく、一緒に作ってほしいんです。でもそこは意外と難しくて、やらせてあげたい気持ちとの私たちのこだわりたい部分とで葛藤もあります。今回の新作60flowerでは、一人のスタッフがお花を1個作ったんですよ。
ー今後の展望をお聞かせください
平岩さん:スパイラルガーデンでいつか展示をしてみたいです。「スパイラルガーデン」の「お庭」という名前と親和性もあるかなって。広いスペースでの展示は大変だと思いますが、それが夢ですね!
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\11/25(月)-12/29(日)まで/
「+S」Spiral Market 横浜赤レンガ倉庫
Fillyjonk Jewelry Exhibition「エタニティしぜんほごく」
開催中