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生活に携わる分野のものづくりをしている、作家・クリエイターの視点から、暮らしのかたちを考えるspiral market selection Interview。
第5回は、陶器制作ユニット「スナ・フジタ」として山野千里さんと共に活動をしている藤田匠平さんにお話を伺いました。
──自分たちで考え、選ぶこと
活動をはじめて15年くらいです。
はじめるときに、結構強引ですが、なるべく人の作品を見ない様にしよう、勉強をしないでいようと2人で決めました。自分たちで考えて、選んでやりましょう、って。だから友達の展覧会にも美術館にもほとんど行かないんです。
それは、例えば陶器の展覧会を観ると、その作家の出自が分かりますよね。この人の影響を受けているな、この流れとこれの合わさったものだな、とか。これは善し悪しとは別の話しで、器をつくっている人は多いし、技術や絵付けもすごい人はたくさんいて、そのなかで特徴があると思われるものをつくるには自分たちで考えないと駄目だと思ったんです。
僕たちは活動をはじめるにあたって、山野さんが絵が上手いっていうのは最初からあって。僕は彼女が苦手とする器の形や釉薬の事も考えて、お互いに欠点を補い合えれば、なんとか勝負になるかもしれないと考えたんです。それをしかめっ面して考えても、日常使いのものだからしんどいので、思いつくままにやるのがいいんじゃないの?って、いまのスタイルになっています。
──無駄だと思えることが、そのものの魅力を支えている
僕はどちらかというと、最終的にこうしようというイメージを固めて、アイディアスケッチをしてから描いていきます。一方で、彼女はいきなり描きはじめられるタイプ。それでいて画面のバランスが良いんです。彼女にはそういう才能というか特性がありますね。絵を描くことがすごく向いているというか。僕はこの一つを加えたら、画面に効果が出るって分かっていたら描くけど、印象として変わらないならやめておくんです。彼女は印象として変わらないとしても、どんどん描いていくんです。
それは結果的に、毎日眺めても飽きないものになるんですよね。効率的に考えられたものは、ある程度理屈で終わるけれど、彼女の場合は理屈を超えて描いているから、きっと持っている人が、発見をし続けられる。無駄なことをしているんです、でも無駄なことというのが最終的にそのものの魅力を支えているんですよね。それはやっぱり凄いな、って思います。
──動物が好き?
こどもやおじいちゃん、おばあちゃんのモチーフが多いですが、モデルがいる訳ではありません。こどもは胴体がコロンとしていて、手足が短くて頭が大きいので、描いていてかわいい感じになるので好きですね。スナ・フジタをはじめるとき、目線としてなるべく広い視野で色々ないきものをフェアに扱いたい、という思いがあって──だから地面のなかの幼虫とか、普段は木を描くと木の上しか目がいかなくなりがちだけど、見えないところも意識しています。
モチーフにも多く登場しますが、動物が好きですね。でも、動物が好きってずーっと言っていたら、だんだん意味分からなくなるんですよね。僕たちは動物を毎日ものすごく描くんです。そうすると、分からなくなる時があって──ゲシュタルト崩壊っていうんですか?あれは言語のことだけど「動物って何?」みたいな、概念そのものが崩れちゃう。でもね、やっぱり動物は好きですよ。最近、子犬を迎えたのですが、やっぱり超かわいい!って思います。
──比較しない
小さなこどもがいるので、仕事と子育てのバランスを探りながらやっています。僕たちの活動は仕事量としてはとても多いので、カップだと2人で1日に5点くらいしか作れないんです。だから、たくさん作ろうとすると不眠不休になってしまう──自分たちでルールを決めているけれど、働きすぎて体を壊してしまったら元も子もないですからね。いまは、こどもが保育園にいる間に2人で集中して制作をして、週に1回は水族館とか動物園に行って、家族の時間をつくるように心がけています。
スナ・フジタの活動で2人が喧嘩することはほぼ無いですね。2人が理想的な関係だと言っていただくことがあって──自分もいいと思っているけれど、客観的に良いか悪いかは分からないですね。もちろん、いまの自分の生き方を悪くないと思っているけど、その根拠に自信はないですね。僕たちは人と比べたりもしないので、自分の客観的な評価やポジションがどうかという事がないので。単純に暮らしの条件が恵まれているからに過ぎないんじゃないか、って思うこともありますね。
インタビュー・編集/スパイラル