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生活に携わる分野のものづくりをしている、作家・クリエイターの視点から、暮らしのかたちを考えるspiral market selection Interview。
第7回は、ステンドグラスを制作しているvivo stained glassの羽田桜さんとオリジナルのプライウッド(合板)つくりから家具制作をしているFLANGE plywoodの上田剛央さんのお2人にお話を伺いました。
──初めてのコラボレーション
vivo stained glass(以下vivo):
spiral market selectionでの二人展として、スパイラルマーケットから提案をいただいて、今回初めてFLANGEさんとご一緒しました。
今回、コラボレーションアイテムも制作したのですが、最初の打合せをしただけで、お互い当日までお楽しみに、って感じでしたね。FLANGEさんの工房に伺ったときや、ウェブを見たときにすぐにイメージが湧いてきたんです──ステンドグラスのスタンドをつくっていただきたいな、とか。詳しいリクエストをしていないのに、すごくよく考えてくださって──今回展示をしている「押し花パネル」のスタンドも、ベースが透明のガラスなのでFLANGEさんのスタンドが透けるのですが、すごくきれいに見えるようにしてくださって。作品に合わせて、形やサイズ、差し込む溝の深さまで色々とつくっていただき、それがとってもきれいで。もう、うれしくって。そして、とても心強かったですね。
FLANGE plywood(以下FLANGE):
逆に、FLANGEのフレームの中にステンドグラスが入っているものは、僕のフレームを渡して、それに合わせて作っていただきました。自分一人で完結しているものづくりとは違って、おもしろいですね。僕だけではできなかった結果がありました。
vivo:
私は以前からプライウッド(合板)や寄木に興味があったんです。作品ができあがる工程を知らないので、今回とてもおもしろかったですね。ひとつの作品にどれだけの時間が掛けられているんだろう?とか。FLANGEさんの作品は層がきれいに上からも横からも見えるので、こんな贅沢なスタンドを自分の作品で使えるのは嬉しいです。きっとご覧になったお客様もそのものの良さは分かっていますよね。
FLANGE:
スタンドって、あくまでサブ的なもので、市販のものを買って飾ることが普通って思ってしまうけれど、そこについても考えたいですよね。
──空間を意識した2人のものづくり
FLANGE:
ステンドグラスとのコラボレーションは初めてで、当初は想像が全くつかなくて──鮮やかな色のガラスで植物を模ったアール・ヌーヴォーの作品の様なイメージしかなくて、どうアプローチをしていいか思い浮かばなくて。でも、vivoさんの作品を見たら、モダンでシンプルなものだったんです。色も落ち着いていて。直線的だけど、やはり手仕事としての形状がちゃんと残っている。木工とは違う有機的な直線をもっているのがいいなって思いました。それに、インテリアとして、生活に寄り添うことを想像しながらつくっているんだろうなって感じました。そうしたら、意外とすんなりコラボレーションできるな、って感じがしてきて。
vivo:
私もFLANGEさんのアトリエに伺ったときに、自分の作品の基本色──モスグリーン、ブロンズカラー、クリアと同じような基本色をお持ちだと分かったので、コラボレーションして違和感が出ないなって思って、そのあとはすんなりと。今回の搬入のときも、お互いの作品を混ぜて展示しても違和感がないね、って話していたんです。
vivoでは、作品によってはポップなカラーを使うこともあるのですが、存在感が強すぎるとインテリアとしては浮いてしまうことがあるので、生活空間に馴染む落ち着いた色合いであることを心掛けています。
2人の共通項は空間を意識していることなのかもしれないですね。
──生活に根ざしたものづくり
vivo:
自分がものづくりをしているので、生活のなかでも食器や家具など大切に使えるものを選んでいます。あと、多肉植物が好きなので、それを入れるものが欲しいなって思って自分でつくったりしますね。
FLANGEさんの作品をみていると、これ欲しいな、って思うものが沢山あります。天板だけ変えられるテーブルとか、素敵ですよね。家具やスタンドはご自身で考えられるんですか?
FLANGE:
僕も自分の暮らしで使う家具や食器も作家のぬくもりが感じられるものを選んでいます。FLANGEの作品は自分で考えたり、妻のリクエストを元に作ったりですね。使い手の視点から考えるほうが生活に根ざしたものづくりができますね。
僕のものづくりの根本として、素材であるプライウッドをつくるところからスタートしたいというのがあって。つくるものに合わせて厚みとか素材感を変えていくんです。今回の「押し花パネル」のスタンドも、小さいんですけれど、プライウッドをつくるところから始めているんです。
vivo:
スタンドも一から作ってくださって、まるでオーダーメイドですね。すごくありがたいです。小さいものって、小さいけれどもとても手間が掛かるんですよね。そういう意味ではものづくりをしている者として、とても共感が持てました。
私も、プライウッドの層に合わせて使いたいと思っていた素材があって──斑点模様のガラスを製造する際に、ガラス板の隅に現れるストライプ状の模様の部分をずっと取っておいたんです。残念ながらこのガラスを製造しているアメリカの工場が昨年閉鎖してしまって、いまは手に入らなくなってしまったんですね。FLANGEさんからフレームをお預かりして、このストライプのガラスをいよいよ使うときが来た!って思って作りました。楽しかったです。
今回のフライヤーも2人の作品から、ストライプのイメージなんです。
──作品を通して時間をみている
vivo:
私は時間が経って美しくなるもの──木が流木になったり、石が時間を掛けて削られて丸くなったり、そういうものが好きです。vivoのステンドグラスも時間が経っても美しいものを、と考えて制作しています。
例えば、「押し花パネル」の花は、初めは鮮やかな色なのですが、時間が経つにつれて色褪せていき白っぽくなるんですけれど、徐々に葉脈がはっきりと浮き出てくるんです。だから初めも、色が変化していく経過も、最後に行き着くところも美しいんですね。作品を通して時間をみているんだな、って思うんです。
FLANGE:
経年という視点では、FLANGEが用いるプライウッドは、無垢の木材を使った家具とは違う部分があって──使い込む中で傷ついたり、色が抜けていったりした部分に、新しい板を重ねることができるんです。使っていくほどに層が増えていく、FLANGEなりの永く使う方法をイメージしています。それに、テーブルの脚など、角材を使っている部分は、将来的にその部材を削って椅子やスツールにリユースできるように予め設計しているんです。
合板の技術は、本来は環境で反ったり変化してしまう木を家具に加工しやすくするために考えられたものなんです。一般的には合板家具って量産品のイメージがあって、ましてや個人の工房で一から合板をつくっている人はいなくて。「なぜやるの?」って反応もあったんですけど、それ以上の価値を僕はプライウッドに感じていたんですね、それを実現したいなって。
vivo:
ホームセンターとかで目にする合板のイメージがありますけれど、FLANGEさんの工房に行くと、全然違うんですよね。ナチュラルで優しい感じがすごくするんです。丸みを帯びているっていうか。それに、ひとつひとつ作られているので、用途に合わせてプライウッドだけど色味を選べるのって、すごくいいですよね。
インタビュー&編集/スパイラル
Spiral Online Storeでは、vivo stained glass×FLANGE plywoodのコラボレーションアイテムを販売中です。