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美しい暮らしのノート#18 鈴木マサル

それぞれの美しい暮らしを支える「日用品」のものがたり。
第18回は、動物や植物の温かみのあるモチーフやユーモアあふれる色鮮やかなファブリックを中心にコレクションを展開している、テキスタイルデザイナーの鈴木マサルさん。ちょっとだけ機能が少ない愛用のラジオには、使う人が入り込める隙間があるそうです。

足りないくらいのものが好き─Tivoli Audioのラジオ

鈴木マサル

illustration: Ichio Otsuka

 僕はシーンとしている状態が苦手で、生活音が聞こえたり、騒がしい方が安心するんです。だから音が鳴っていないと仕事が進まないので、常になにかをかけている状態です。いつも使っているこのラジオは、オーディオに詳しい友人に、事務所の狭いスペースでも気にならないコンパクトなサイズで、なるべく音が良いもの、というリクエストをして教えてもらいました。
 これはチューニングをダイヤルで合わせるアナログなところが良くて、でも携帯を無線で繋ぐ機能もあるんです。デジタルとアナログの中間みたいな感じが良いと思っています。それに、ぽんと置いてある存在自体が好きですね。事務所が少し電波の悪い所で、たまにザーザーいったりするけれど、それでも使おうと思えるということは、きっと気に入っているということなのだろうなって思います。

 仕事中はだいたい同じチャンネルのラジオを流しています。自分で音楽をかけると、好きなタイプのものしか聴かなくなってしまうけれど、ラジオだったら知らない曲がかかるので、偶然の出会いがあるのも好きですね。夜に絵を描いたりする時は制作が乗るような、自分の好きな音楽をこのラジオに繋いで聴いたりします。日中にラジオで耳にした気になる音楽を保存しておいて、後から聴くこともありますね。僕は仕事中心の生活をしているので、ほぼこの事務所にいるんです。仕事をしていることが楽しいので、生活として仕事を楽しんでいる感じですね。

 僕は必要なものを買うことができなくて──例えば、服も明らかに足りないものがあるのに、たくさん持っているデニムを買ってしまうとか。好きなものしか買えなくて、だから同じものばっかり溜まってしまう現象が起こっています。多分、買ったときの嬉しさとか高揚感が好きなのでしょうね。そういうことを求めているのだと思います。必要だから買う、というのは大して嬉しくないというか。同じ様に、機能的なもの──あれもこれも揃っている考え尽くされた便利なものも逆に買うことができないんです。
 使う人が入り込める隙間があったり、補っている感じがやっぱり愛着になっていくんじゃないかなって思っています。便利過ぎるとそういった気分を分かち合えない、そんな感じがありますね。アナログばかりがいいとは思っていないですけれど、隙間みたいなものや、何かが欠落しているようなところがある方が好きですね。このラジオも機能としてはちょっと少なくて、足りないくらいのものが好きなのかもしれないですね。

インタビュー・文 編集部

鈴木マサル(すずき まさる)
テキスタイルデザイナー

多摩美術大学染織デザイン科卒業後、粟辻博デザイン室に勤務。
1995 年に独立、2002 年に有限会社ウンピアット設立。2004 年からファブリックブランド OTTAIPNU(オッタイピイヌ)を主宰。自身のブランドの他に、2010 年よりフィンランドの老舗ブランドmarimekko のデザインを手がけるなど、現在、国内外の様々なメーカー、ブランドのプロジェクトに参画。東京造形大学教授、有限会社ウンピアット取締役。
http://masarusuzuki.com

2019年11月8日 から11月28日まで、スパイラル1FのMINA-TOにて『鈴木マサル/OTTAIPNU』を開催中。 スパイラルオンラインストアでは、2019年11月22日より、OTTAIPNUの一部のアイテムと作品を展開予定。詳細は、スパイラルオンラインストア OTTAIPNUブランドページでご紹介します。

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