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スパイラルは、フィンランドを代表するアーティストの1人、マリタ・リウリアの個展を開催しました。
幼少期に火災や病気など様々な困難に遭いながらも、病室で空想を広げ、スケッチを綴っていたマリタ・リウリア。貧しい家庭に育ちながらも、無償で全ての教育が受けられるフィンランドの環境に恵まれ、大学では美術と政治などを学び、ジャーナリスト、経営者、そしてアーティストとしてキャリアを開拓してきました。以来、舞台芸術、絵画、メディアアート、写真など多彩なジャンルに取り組み、常に時代をリードする表現を世界中で発表し続けています。
2016年に、フィンランド郊外にあるSerlachius Museum Gösta(セルラキウス ミュージアム ゴスタ)にて大規模個展「Golden Age」を開催。100点以上に及ぶ絵画、写真、映像作品などの新作を精力的に発表するマリタは、まさに作家としての円熟期=黄金時代を迎えています。
国にとって、個人にとって、「黄金時代」とはどのようなものなのか――。
日本をはじめとする様々な国で、人々は道標を見失い、孤独に陥っているようだと語るリウリア。経済恐慌、自然災害、宗教、そして難民など世界が抱える問題に対し、アートができることとは? 彼女は問い、思考を促します。
本展では、会期中にリウリア本人が会場で公開制作を行いながら、来場者と交流を図ります。日本フィンランド外交関係樹立100周年にあたる本年。国を超え、ジャンルを超え、時を超え、様々な荒波を強い信念を盾に、しなやかに生き抜いてきた女性アーティストと共に、語らい、考える貴重な機会を創出しました。
本展は、フィンランドでの「Golden Age」展をベースに、《Tokyo Series》と題する新作も含めて構成し展示しました。
■本展の見どころ
タイトルの「Golden Age」には3つの意味が込められています。
1つ目は、アーティスト自身における「黄金時代」です。マリタ・リウリアは、1980年代にアーティストとしてのキャリアをスタートさせ、以降世界各国で経験を積み、今まさに作家としての円熟期を迎えます。出展作品は、絵画、写真、映像と今まで積み重ねてきた作品からの応用が見られることでしょう。
2つ目は、素材としての「金」です。本展に出展する絵画作品は全て、最初にキャンバス一面に黒い溶岩の顔料が塗られることから始まります。今にも吸い込まれそうな暗黒をベースに「金」を主とした絵の具で描き出される絵画。黒と金の対比に目を奪われることでしょう。
3つ目は、フィンランド美術界の「黄金時代」です。1917年にロシア帝国から独立したフィンランドで、アーティストたちが自国のアイデンティティを強く打ち出そうと活動をした時期が第一の黄金時代、そして、1960-70年代、経済発展と福祉社会の確立を遂げ、フィンランドが世界に名を馳せる国に発展した時期を第二の黄金時代とマリタ・リウリアは捉えています。そして、第三の黄金時代はいつなのでしょうか?
国にとって、個人にとって、Golden Age:黄金時代とは何なのか。経済恐慌、自然災害、宗教、そして難民など、世界が抱える問題に対し、アートができることとは。彼女は問い、思考を促します。
■展示風景
マリタ・リウリア展「Golden Age」
会期:2019 年 1 月 5 日(土)―1 月 17 日(木) 11:00―20:00
会場:スパイラルガーデン(スパイラル1F)
入場無料
お問い合わせ:03-3498-1171(スパイラル代表)
主催:株式会社ワコールアートセンター
企画制作:スパイラル
企画協力:Serlachius Museums
後援:フィンランド大使館・東京、フィンランドセンター
Marita Liulia(マリタ・リウリア)
フィンランドを代表する現代美術作家。フィンランドのヘルシンキとヘイノラを拠点に活動。ヘルシンキ大学で文学と政治史を学び(BA、1986)、アアルト大学でビジュアルアーツを学ぶ。メディアアート、絵画、写真、ステージパフォーマンス、短編映画、書籍、ゲームなどその表現方法は多岐にわたる。世界50カ国以上で展覧会を開催、20カ国以上の大学で講演を行なう。2004年にアアルト大学(フィンランド)から初のアーティスト・イン・レジデンスの招待を受ける。主な個展をKiasma(ヘルシンキ)、フィンランド国立美術館(ヘルシンキ)、アモスアンダーソン美術館(ヘルシンキ)、原美術館(東京)、Conde Duque(マドリード)、バンコク国立博物館(バンコク)、ノイムンスター修道院(ルクセンブルグ)で開催。パフォーマンス公演は、ヴェネツィア・ビエンナーレ、Théâtre du Châtelet(パリ)、The Joyce Theater(ニューヨーク)、J.F. Kennedy Center(ワシントン)、国立オペラ座(フィンランド)などで実施してきた。The Prix Ars Electronica in Austria (1996) 、The Prix Möbius International in France (1996, 1999)、The Finland Prize、The Finnish Cultural Fund Prize、Erik Enroth Prize、Stina Krook Foundation Prize (2008) など権威ある賞を多数受賞している。2018年、フィンランドの芸術家に贈られてきた最高位の勲章「プロ・フィンランディア・メダル」を受章。https://www.maritaliulia.com/