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Portrait in hand#12

さまざまな分野で活躍する女性たちの手。その表情や仕草から伝わるそれぞれのライフストーリー

題字はゲストの手筆によるものです。

違和感に気づくこと

校正者 牟田都子

photo: 井上佐由紀

 雑誌や書籍が出版される前に、ゲラ(試し刷り)の文字や語法に誤りがないかのチェックをしたり、日本語として意味が通りやすいように文章を整えたり、事実関係に誤りがないか調べもの(ファクトチェック)をしたりする校正・校閲の仕事をしています。

 小さい頃からずっと図書室にいるほど本が好きでした。大学生のときに司書の資格を取るために行った図書館実習で、本好きのお子さんとの触れ合いがたのしくて、卒業後は図書館で働くことにしました。本に囲まれた日々の中で、とにかく手当たり次第に本を借りては読んで、ものすごく世界が広がりました。30歳を目前に、新たなことにチャレンジしたいと思い、縁あって大手出版社の校閲部でお仕事をさせていただくことになりました。父が校正者だったということもあり、漠然とした校正者像というものはあったのですが、私が想像していたよりはるかに奥が深いものでした。

 よく誤って使ってしまう漢字の一例として「ちりばめる」という言葉に「散」という字が当てられることがあるのですが、正しい漢字は「鏤める」と書きます。漢字や言葉の間違いは、とにかくたくさん辞書を引き、経験を積むことで、だんだんとその違和感が目に入ってくるようになります。この仕事を始める前は、このような文字や語法の誤りを見つけることが校正者の仕事だと思っていました。でも実際は、調べものに膨大な時間を割くこともありますし、整えた文章を提案する場合、著者の来歴やお人柄によっても、媒体によっても、文章のスタイルは異なるので、例えば、ごつごつとしていて、一読しただけでは意味の通りにくい文章が著者の個性だと考えた時に、それを読みやすくつるっとさせてしまうことは正しいとは言えませんよね。そのさじ加減は、毎回非常に悩むところで、一ページ校正するのに数時間かかることもあります。ある作家さんが「校正の仕事は、注意喚起をしてくれる」と言ってくださいました。そういう風に私たちの仕事を捉えてもらえるとすごく嬉しいです。

 この時代にあえて紙を媒体とした読まれるべき本があると思うので、「良いもの」を気の合う方々とつくりながら、校正者の知名度が少しずつ上がってきた今、自分の経験を活字にして、文章にして、伝えたいことを残していきたいと思っています。

インタビュー・文 編集部

牟田都子さんの校正済み原稿はこちら

牟田都子(むた・さとこ)
1977年、東京都生まれ。出版社の校閲部を経て、現在、フリーランスの校正者。関わった本に『猫はしっぽでしゃべる』(田尻久子、ナナロク社)、『詩集 燃える水滴』(若松英輔、亜紀書房)など。『本を贈る』(三輪舎)では著者の著者の一人であり、校正も務めている。

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