SPIRAL

Where Creativity Comes to Life

CREATOR’S INTERVIEW Vol.7/後編

青山 夢

Interview & Story

作り手の想いを綴るCREATOR’S INTERVIEW。
第7回目のゲストは「Spiral Xmas Market 2025」のキービジュアル・装飾を手がけた青山 夢さん。
前編は制作活動において、これまで内在していた思考の軌跡を辿ってきました。
後編では、「宇宙なクリスマス」をテーマに開催する「Spiral Xmas Market2025」に込めた想いを伺いしました。

壮大でキラキラした希望に満ち溢れた世界 

ー「宇宙なクリスマス」というテーマについて教えてください。

青山 夢さん:クリスマスが近くなると、街がイルミネーションに包まれていきますよね。その光景が、まるで夜空の星が降りてきたかのようで、この幻想的な輝きが、地上だけではなく、いろいろなところに広がっていっていたら素敵だな、と。地上や海や空がつながって、無限の世界へ広がる、壮大でキラキラした希望に満ち溢れたような世界観をつくりたくて、「宇宙なクリスマス」をテーマにしました。

「遠くから私たちを見守る」神話と宇宙人 

ー宇宙人に関して、未知の存在として恐怖心を抱く方もいるかと思いますが、青山さんはどのようなイメージを持っていますか。 

青山 夢さん:多くの人と同じように、憧れやワクワクする気持ちがありつつ、恐怖心もあります。ですが、宇宙人は、人間と少し離れたところから我々の生活を見ているように感じて、それが神話における存在と似てるなって思っています。

例えば秩父にある三峰神社に伝わる狼信仰のなかでは、狼のことを「おいぬさま」と呼んでいて、災いがあったときは「おいぬさま」に守ってもらうんです。「おいぬさま」を神様と捉えて、私たちの暮らしをそばから見守ってくださっている。それと似たような神話が日本のいたるところで生まれています。

離れたところから人間達の生活をのぞいているという神秘的な部分では、宇宙人も似ていると感じるところがありますね。まだ宇宙人は、神話ほど具体的なストーリーはないとは思うんですけれども、私にとってそういう存在です。

感情がわからない無邪気な宇宙人

ー 宇宙人はどこからきて、どんな性格をしているのかなどキャラクターの設定もあるのでしょうか?

青山 夢さん:「感情がわからない無邪気な宇宙人」だけど、なぜか友好的で「この場所が好きだから一緒にいる」という存在です。お互いに感情はわからないけど、クリスマスのこの時だけは、みんなで集まって、楽しくワイワイしているような世界を描きました。

同じ人間同士でも価値観や生まれた場所が違うと、考えや行動が理解できないことってたくさんあると思うんですよ。例えば来日された海外の方の行動で、文化圏が違うから、日本人には理解できないことってあるじゃないですか。

もちろん外国人=宇宙人と言っているわけではなくて。今私たちが生きている世界って、多様性が叫ばれる時代だからこそ、今まで知らなかった考えが入ってきて、分かりあうのが難しいことがありますよね。それでいろんな人が怒っていたり、問題が起きていたり。宇宙人というモチーフは、この「分かり合えないけど、同じ空間にいる」という今の世界を可視化している側面もあります。

ー 一緒に盛り上がることはできるけど、何を考えているかはわからない。その「わからないこと」がポイントなんですね。 

サンタクロースと宇宙人 


ー今回、サンタクロースと宇宙人を重ね合わせている部分もあるそうですが、青山さんにとって両者はどのような存在ですか?

青山 夢さん:幼い頃に「悪いことをすると、サンタさん来ないよ!」って、おそらくみんな言われたことがありますよね。絵本などを読んで、サンタクロースが「寝ている間にプレゼントを届けてくれるおじいさん」だということは知っているけど、実際には見たことがない。でもサンタクロースが私たちを見ていないと、悪いことをしているかどうかも分からないじゃないですか。

「近くにいるんだけど、外から私たちを見ている」。そういう距離感が、宇宙人とサンタクロースは似ているなと思います。

世界各国のクリスマスをモチーフに


ー今回のインスタレーションでは、「宇宙」以外にも各国のクリスマスに関連したモチーフが登場しています。メインビジュアルにも使用している作品<クリスマスの旅>は、ギリシャに関係しているそうですね。

青山 夢さん:そうなんです。 ギリシャって、クリスマスツリーじゃなくて、舟を飾るんですよ。どうしてかというと、クリスマスの時期に漁師が帰ってくるからなんです。「漁師が無事帰ってきますように」っていう、土地に残された人たちの思いが込もった、舟です。

そのほか、フランスのお菓子のトロッコ列車をモチーフにした作品も作りました。去年、フランスのクリスマスマーケットに行った時にお菓子のトロッコ列車の置物がたくさん並んでいて、スノードームの中身もお菓子の家だったのが印象的で。

今回SPIRALで展示している<Happy Holidays>は、フランスに行ったときのクリスマスマーケットの記憶から、かなり影響を受けていると思います。観覧車も全部お菓子になっているんですよ。

日本人だけではなく、さまざまな国の人に楽しんでほしいと思ったので、世界各国のクリスマスを取り入れました。「あ!これ自分の国のクリスマスだ!」という、どこか懐かしい気分になって欲しいなと思っています。

〈Happy Holidays〉 2025/ポリエステル生地、油彩、アクリル、板/606×606mm

見たことのない新しいクリスマス


ー 今回のクリスマスマーケットはどのような人に見て欲しいですか?

青山 夢さん:国籍、年齢、性別問わずいろんな人に見てもらいたいです。 今回は「宇宙なクリスマス」ということで、普通のクリスマスとは雰囲気が違うと思うんです。見たことのない新しいクリスマスを楽しみたい人にも来てほしいですね。


ー 日本のクリスマスについてはどう思いますか。

青山 夢さん:型にはまらず、いろいろな文化を取り入れるのは日本の面白いところだな、と。表現者目線になってしまうんですが、日本のクリスマスは寛容だからこそ、新しいものを生み出すことができると思います。


ー 最後にクリスマスマーケットに対する想いをお願いします。

青山 夢さん:そうですね。今回のクリスマスマーケットでは、「私が見聞きした世界各地のクリスマス文化」「懐かしさや親しみやすさ」そして、「宇宙」という3つの要素を融合させた「もうひとつのクリスマス」をつくりました。見たことがあるようで、見たことがないような。

時代や国境を越えたあたたかな世界を描きました。地上、海、空、というようにだんだんと宇宙へ広がっていく「新しいクリスマス」をお楽しみいただければと思います! 

\SPIRALにて開催中/

Spiral Xmas Market 2025

今年のテーマは「宇宙なクリスマス」。無邪気で友好的な宇宙人がツリーに登場します。「空から現れる存在」であり「未知の贈り物をもたらす存在」である宇宙人とサンタクロース。両者のイメージを重ね合わせることで、訪れる人に驚きと希望を届けます。

心が弾むような幻想的な空間をお楽しみください。

青山 夢

1997年茨城県生まれ。
死生観や信仰、民間伝承を背景に、マンガやアニメなど現代的モチーフを融合し、時空を超えた神話的世界を描く。人間と自然の共生や治癒と破壊の循環をテーマに、獣の皮膚や毛を素材に制作。その表現は、ウルトラ怪獣の縫い目や寺山修司作品の極彩色の濃密な昭和の質感に、ポケモンやたまごっちの滑らかな平成的フォルムを重ね、異なる時代感覚を融合させた独自の造形世界を構築している。

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