SPIRAL

Where Creativity Comes to Life

山崎美弥子展 “Love Supreme”

Spiral Garden

青山

2025.07.24(Thu)-2025.08.11(Mon)

#Exhibition#Art

Art & Exhibition

Index

毎年ご好評をいただいている山崎美弥子の個展「Love Supreme」を本年も7月24日(木) – 8月11日(月・祝)にスパイラルガーデンで開催します。

5回目となる今回のテーマは、”Love Supreme”。名前さえ忘れ去られた女神の娘たちが、時空を超え雨上がりのジャングルで再会し、そこに集うまでを描きます。本展では、旧作に加え、新作シリーズ「Rain/雨」を含む、1000年後の未来の風景を描いた200点以上の絵画を展示・販売いたします。
植物や流木、草木染めの手法を用いるアーティストたちと共に構成する有機的なインスタレーション作品世界は、鑑賞者に深い記憶の確認と、懐かしさのような感情を呼び起こさせることでしょう。

また、作家本人も来日し、会期中にはトークショーやワークショップも予定しております。

スパイラルガーデンで5回目の節目を迎える展覧会、今回も山崎美弥子の新たな世界観を体験できる特別な機会となりますので、ぜひ会場に足をお運びください。

皆様のご来場を心よりお待ちしております。

*参加クリエーター/アーティスト

春山福太郎、コセキイサオ、solosolo natural dyeing、斎木光彦、UR&N/ULTIMATE RHYTHM&NOISE、こやまよしこ/花寧、小林陽子/Le plaisir、yüüki&mana、KiraTama

開催概要

山崎美弥子展 “Love Supreme”

会期

2025年7月24日(木) – 8月11日(月・祝) 11:00 – 19:00
*7月24日(木)のみ18:00まで

会場

スパイラルガーデン(スパイラル 1F)

入場料

無料

主催

山崎美弥子展実行委員会2025

企画協⼒

スパイラル

協賛

AFRICA ROSE、Bonkura Co.,Ltd.、maturica

お問合せ先

03-3498-1171(スパイラル代表)

関連イベント

イベントの詳細、申込方法につきましては後日、本webページとInstagramなどで公開いたします。

作家・山崎美弥子からのメッセージ

その島の女神には十人の娘がいた。娘たちは、同じところで生を受け、皆、母と同じ名を授かった。やがて大人になり、それぞれこの惑星の、山の上、都市(まち)の中、田園の村、波打ち際、深き谷、水鏡に映る岸、最果てなどで生きていた。記憶はいつしか失われ、母の名も忘れ去られた。彼女たちは、水に潜る者、色を染める者、他を癒す者、祈りを舞う者、子を育む者、旅する者、光る物を創る者など、何者かになることを決め、人から呼ばれるための仮の名を持ち、各々のすべを選んで生きていた。姉妹同士がこの惑星の、何処かでたとえすれ違っても、一度たりとて気づかなかった。

満ち満ちたある日のこと、ひとつの兆しを読み取って、彼女たちは、それぞれ異なる時間軸から現れ、再会を果たした。それは、大切な名とともに忘れ去られた、約束の待ち合わせ場所だった。姉妹であることも、覚えてはいなかった彼女たちだが、しだいに深い深い恐れを捨て、勇気を出して痛みの物語を聞かせあった。「言葉」という聖なる響きを得て、幾度も偽られて来た物語たちの本当の姿は、その時永遠(とわ)に自由になった。物語たちを冷たいジェイル(牢獄)から解放した十人の姉妹たちは、互いの目を見つめあってみることにした。

雨が来た。朝と夜と、そのはざまに、繰り返し訪れた雨。それは、悲しい時に、大切な人が何も言わずに繋いでくれた、あの手のようにやさしかった。天から撒き散らかされた、しなやかでやわらかい、その糸たち。ここに集う前までに、ずっと掻き集めてきた飾りの数々、それはひとつずつ置いてきた。そんなサバイバルギアを手放すたびに、生まれた時のように透き通り、十人の体から滲みだす、ぬくもりに満ちたハミングが、音も無く響き渡った。孔雀の背中や、馬のたてがみ、波たつ花びら、それから淡い蕾たちに、ふわりと触れては去ってゆく、母

なる女神住まう島の、思い出せなかった風みたいに。それは懐かしい1000年後の未来の風景。…雨は、遂に帷(とばり)開き、光たちと一体となった。またたくまにクリームイエローが、この惑星の裏側までの、すべてに塗りつぶされた。

ペリドットもジンジャーも、カヘレラニの貝殻さえも、囁きあうようにさえずり始める。さっきまでの雨に濡れたまつ毛から、雫がうら若しの草上へ着地する。やすらいだ十人の姉妹たちは目を閉じる。ジャングルで、光と光が溶けあってゆく。 潮騒の匂いとともに、聞こえない輪唱は、波の向こうにまで届く。その情景の一部始終が、夜空色や琥珀色、ヘーゼル色の瞳に映る。どこまでも続く明るい地。涙跡はジェイド。ビリジアンの花芽(かが)や葉が、ゆっくりと目を覚ます。彼女たちが、肩を並べて腰かけた、賢者の切り株は、この上も無くさらさ

らしていた。刻まれた年輪。見あげると、笑みが映る。こもれびの織り物が、十の裸足の甲にレースの模様を描く。…そこはまるで守られた繭。誰からともなく、よろこびの物語を語り始める。目と目を見つめあっている。まるで、一番会いたかった人たちと、待ち合わせていたことをようやく思い出したかのように。

水平線は、言葉を発することも無く「愛してる」と伝え続ける。姉妹たちは、今やひとつの風景になる。彼女たちは思い出した。その母の名は、そう、ラブシュプリーム。(至上の愛)

山崎美弥子 / YAMAZAKI MIYAKO

アーティスト。1969年東京生まれ。多摩美術大学絵画科卒業。東京を拠点として国内外で作品を発表する。一転し、2004年から太平洋で船上生活を始め、現在は人口わずか7000人のハワイの離島で1000年後の未来の風景をカンバスに描き続けている。
出版物
「モロカイ島の贈り物」(産業編集センター)、「Heavenly Brights」(ニュースベース)、「LoveSpeaks」(光琳社)、最新刊に「モロカイ島の日々」(リトルモア)、「ゴールドはパープルを愛してる」(赤々舎)他、ドミニク・パルメ仏訳によるフランス語版「モロカイ島の日々」フランス国内にて出版予定。

主な個展・グループ展・活動
1999年 「Love Speaks」P-HOUSE(恵比寿)、「Love’n pieces」ワタリウム美術館 / オンサンデーズ(青山)2001年 「海と空の結婚パーティー」HIROMI YOSHII(横浜)
2002年 「LAND」ゼロ・ワン・プロジェクツ(ロサンゼルス)、「Beautiful Artist」曽根裕キュレーション / 菜香亭(山口)
2003年 「GIRL! GIRL! GIRL!」東京オペラシティアートギャラリー(初台)2004年 「Café In Mito 2004」水戸芸術館(水戸)2013年 「RETROSPECTIVE」モロカイアートセンター(ハワイ)
2017年 「山崎美弥子展」 SISON GALLERY(代官山)2019年 「Special Days」丸山邸 / KEITA MARUYAMA(青山)
2020年 「ゴールドはパープルを愛してる – 千年後の未来の風景 – 」伊勢丹メンズ館(新宿)
2021年 「山崎美弥子展 “Night Rainbow”」スパイラルガーデン(青山)
2022年 「山崎美弥子展 ”HIGHTIDE IN SHELL”」スパイラルガーデン(青山)、「山崎美弥子展 “KOKI’O KEA”」ワコールスタディホール京都(京都)2023年 「山崎美弥子展 “DAWN -kind of blue YAMAZAKI MIYAKO with / 360° 2023”」 スパイラルガーデン(青山)、「Ocean and Sky」 Ailleurs(パリ)
2024年 「山崎美弥子展 “Planet Journal  惑星日記”」 スパイラルガーデン(青山)、「国際的非暴力展#W_INITER」曽根裕&西原珉キュレーション / 京都市立芸術大学(京都)

「 Numéro Closet 」にてフォトエッセイを連載中