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CREATOR’S INTERVIEW – UMIOTO/前編 –
つくり手の想いを綴るCREATOR’S INTERVIEW。
今回はSICF26のマーケット部門でグランプリを受賞したUMIOTOさん。
金工の世界へ誘われた経緯や、金属に藍染めをするようになったきっかけ、金属や藍の面白さなどを伺いました。
エネルギーを使ってつくる、金工の世界へ
— UMIOTOさんが造形をはじめられた経緯からお伺いします。大学で金工を専攻されていたそうですが、金工を選んだきっかけなどはあるのでしょうか
UMIOTO:もともとは空間デザインとかインテリアの方を目指していたんですけど、受かったのが武蔵野美術大学の工芸工業デザイン学科でした。一年生の時は、金属、布、インテリア、陶芸などから自分が興味あるジャンルを3つ選んで、いろいろ試せるんです。最初はインテリアに興味があったので、漠然とそちらに進む気持ちでした。
その中で、アルミ彫塑っていう、アルミを叩いて自然物をつくるっていう授業があって。ボーっと火を燃やして、硬い金属を柔らかくして、大きな音を立てて作品をつくるのが本当に楽しくて。こんなに身体全部、エネルギーを使って物をつくったのが初めての経験だったんです。
金属って面白い。こんな強い素材って出会ったことない、と。そこから金工に行こうって決めて、全く違う方向に進むことになりました。
— 運命的な出会いだったんですね。
UMIOTO:本当に「出会い」。出会いがいろいろ起こって今に至りますね。
— 現在はアクセサリーやオブジェをつくられていますが、大学生の頃は大きい作品をつくられていたそうですね。
UMIOTO:カトラリーや箱などを製作・加工する金属の基本的な技術を学ぶ一方で、私は常に面白いことをやりたいという思いがあって。
コンセプトありきで、どうやったら面白い作品ができるか。ひたすら考えて、オリジナルのテクニックで、やりたいかたちを自分の感じたままにつくっていたんです。
— 当時、ご自身で制作した心に残っている作品などはありますか?
UMIOTO:今に通じるものだと、音が鳴る「鉄のおむすび」ですね。溶接面を被って、ひたすら粒をビビビビビって溶接しながらおむすびにして。
中に鈴が入っていて、手に持つと音が出るんです。ご飯粒は、手がかかりましたね。音も、つぶつぶの装飾も、やってることは今とあまり変わってないなって思います。
— 卒業されてから少し作家活動をお休みされていたとのことですが、活動を再開したきっかけはあったんでしょうか?
UMIOTO:出産が続き、子どもに全てのエネルギーを注いでいたので、金属作品をつくるエネルギーがなくて。やりたい気持ちはずっとあったんですけど、今は作家としての活動は無理だな、と作家活動に向き合わないようにしていました。
ただ完全にものづくりから離れていたかというとそうではなくて。子どもの肌トラブルをきっかけに、洋服を手づくりしていたんです。その流れで自分の洋服もつくっていたら、それを見た友人が欲しいと言ってくれて。
つくる機会が増えたことで、3人の子どもの一番下が幼稚園に入ったタイミングで、「この子が小学生になったら、また金属作品を制作できるかも」と思えたんです。
日常生活の延長でつくったものを、子どもたちが喜んで着てくれる。大学時代は、一度もアクセサリーをつくろうと思ったことはなかったけど、自分が制作したものを身につけている姿や、お守りのように扱っている姿を見て、エネルギーをもらえたんですね。
そのエネルギーで、金属の小さいアクセサリーをつくりました。
アクセサリーだけど、私の中では小さい作品をいっぱいつくっている感覚でした。見て、愛でられるアイテムはいいな、って。
風景から音を感じた、旅の記憶
一緒に旅をした友人との共作で見つけた藍染め作品
— 創作の姿勢、インスピレーションの源は、当時、アジアの少数民族の地域を旅した風景と伺いました。
UMIOTO:母が少数民族の布を卸す仕事をしていて、大学生の頃に、少数民族の村に一緒に行かせてもらったことがあったんです。
強烈に覚えているのが、民族衣装をまとっている原住民の方が、田んぼで歌いながら稲を植えている光景。遠目から見ると花が咲いているように見えて、風景から音を感じたのがはじめての経験で。大きな衝撃を受けたんですね。
藍染や草木染めをした民族衣装の経年変化の不思議さと美しさに感動したし、自然と共に生活をしている様子に、人間も自然の一部なんだと改めて気づいて。少数民族の地域に興味が湧いて、大学時代は何度も友人とチベットやアジアの僻地に行き、暮らしや衣服を写真に収めながら「かっこいいね!」って言い合ってました(笑)。
— 日常的に着ている服にこそ、その民族ならではの個性が出ているんですね。
UMIOTO:そうですね。はじめて訪れたのは、中国のサパというベトナムとの国境にほど近い、モン族やザオ族などがいる地域で。今から20年以上前ですが、ハンドメイドのかっこいい伝統的な服(民族衣装)を着たおばあちゃんが何人かいて、本物がギリギリ残っているという感じでした。お喋りながらずっと刺繍していたりとか、手仕事を感じられましたね。
— 同じように興味を持っているご友人と一緒に行かれていたんですね。
UMIOTO:そうなんです。予備校時代からの友人で、多摩美のテキスタイルに進学し、今はYURUTAO(ユルタオ)っていう洋服のブランドをやっているんですけど、長い春休みはその子と2人でひたすら旅行して。
私が作家活動から離れている時も、彼女はずっと気にかけてくれていたので、私がものづくりを再開する話をしたら、早速「ボタンつくって」と声をかけてくれました。
実は今回の藍染の作品は、そのボタンづくりをきっかけに始まったんですよ。
普通、洋服は布が縫い終わった後に、ボタンなどの副資材や装飾をつけるんですが、彼女の洋服はボタンなども全てつけ終わった後、製品自体を丸ごと染めるんです。
できあがった洋服を見てみると、ボタンが藍に染まっていて。金属が染まることに感心したんです。染まるというより藍が定着しているだけだと思うのですが、そこから、染め師の方に相談して、これまでの金工の色上げの方法にはないものをつくれないかなと、試行錯誤して今の技法にたどり着いた感じです。
— 染め師は齋藤知華さんという方だと伺いました。
UMIOTO:齋藤さんも多摩美のテキスタイル出身の方で、学生時代にお会いしたことがあるし、YURUTAO(ユルタオ)の洋服を染めていて、私もご縁というか、一緒にお願いさせていただいています。
— 特別な藍染めをされていると。
UMIOTO:伝統的な「すくも*」を建てて染める、正藍染っていうんですかね。きれいな色を生み出せて、堅牢度が強くて色落ちしづらいようです。今の私にとってなくてはならない存在です。
小規模でやられているんですが、伝統的な方法で染めている方が年々少なくなっているので、そういった方が続けていけるよう、微力ながら活動を支えられたらと思っています。
*すくも・・・藍染の染料のもととなる植物染料のひとつ
— UMIOTOさんも手間を惜しまずというか、手仕事をすごく大事にされていますし、それが作品に表れていると感じます。
制作される際は、「自然に抗わずに、生活に寄り添い、手を加えて長く使う」ことを意識されているそうですが、先ほどお話に出た少数民族の風景などにも影響を受けたんでしょうか。
UMIOTO:そうですね。自然の循環というか、そういうものに抗わないで作品をつくりたいなと、大事に思っていますね。
— 藍染めも、金工も、すべてが循環しているというか、つながっていますね
UMIOTO:金属って元が強い素材なので、失敗してもつくり直せる。何十年前の祖母の指輪のサイズ変更や仕立て直しができたりするところも魅力だと思っています。
失敗したパーツを残しておくと、ある日、別の作品で再利用できて「このために残しておいたんだ!」と感動することがあって、造形としてつくりやすいと思いますね。
— 藍染の布は経年変化して味が出てきますが、UMIOTOさんの藍染の作品も変わっていくのでしょうか?
UMIOTO:私も変化を期待していたのですが、藍染めってサビを防止してくれる効果があるんじゃないかって思ってしまうぐらい、2年前の作品もサビも緑青も吹かず、黒ずんだりもしないんです。
科学的根拠もなく、実体験での話になってしまうのですが、毎回不思議だなと思っています。
さらに季節で藍の出方が濃く出たり、淡くなったりするんですよね。この作品と同じ濃度で、とお願いしても、違う雰囲気で仕上がってくることがよくあって、染め師の方も「同じ染料を使ってるんだけどね」って仰いますね。日々実験を繰り返すように作品をつくっている感じです。
— 色は少しずつ変わってきていますか?
UMIOTO:変わるというか、取れていくっていうイメージですね。顔料が乗っている感じなので、ちょっとずつ薄くなっていくというか。
少しずつ変化するというよりは、傷に弱いので、モノに触れているところの真鍮がちょっとずつ見えてくる感じですね。
— その変化が楽しいし、素敵ですよね。
藍染めを施した作品でも、ところどころ真鍮の色が残っていますね。
UMIOTO:藍染めをすると全部が藍の色になっているので、ポイントとなる箇所を磨いて、真鍮の色を出しています。外側のラインや粒を際立たせると、作品が一気にバッと決まって。すごく楽しい仕事です。本当に細か くて大変ではあるのですが、やっぱり私の作品にはなくてはならない作業ですね。
— 光の加減によっては、真鍮の色がより際立ちますね。
UMIOTO:不意にあらわれる、自然の中にキラっと光が差し込む風景が大好きで。金属って光にあたるとキラキラする素材なので、自然物の水面とか光を表すのに向いてる素材だなって改めて思いますね。
>後編に続く
UMIOTO
1983年神奈川生まれ。2006年武蔵野美術大学造形学部工芸工業デザイン学科金工専攻卒業。
2020年「UMIOTO」を立ち上げ、風景が奏でる音やかけらからイメージをして、唯一無二の真鍮を藍染めした装身具や、アートオブジェを制作している。
主な受賞歴に、「第9回岡本太郎現代芸術賞」入選(2005)など。
主な出展歴に、「77 NEEDLE WORKS/ UMIOTO」(Spiral Market アトレ 吉祥寺)(2025)「その人の美意識、感性を香りとして纏う」(三越伊勢丹 新宿店本館/東京)(2025)など。
Photo : Rika Ozawa
SICF26 MARKET部門 グランプリアーティスト展
UMIOTO 「WATER FLOW」
スパイラルは、昨年5月に開催したアートフェスティバル「SICF26」のMARKET部門において出展者70組の中からグランプリに選ばれたアーティスト、UMIOTOによる個展を開催します。
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